
ベトナムの大学と提携し人材育成
電験三種電気技術者を多数輩出

- しろくま電力株式会社
- 東京都港区芝大門 2-4-6 豊国ビル
- 代表取締役:谷本 貫造 氏
- https://corp.shirokumapower.com/(外部サイト)
- 巻口 守男 さん(写真右) afterFIT Viet Nam Co., Ltd 代表取締役
- グエン・ホワン・トゥ さん(写真左) しろくま電力株式会社 設計部
※内容は2024年4月時点のものです
21世紀の現代では、多くの業界でグローバル化・ボーダーレス化が進んでいる。日本から海外の現場で活躍する人材や、海外の人材が日本を目指し多く来日するなど、人材の多様性・流動性が急速に高まっている。それは電気業界においても同様だ。
各業界で幅広く活躍する電気技術者個人を取り上げてきた「活躍する電気技術者たち」では、今回新たに「外国人人材を電気技術者として採用し活躍する企業」など、新たな取組を展開する企業をピックアップ。多様な人材や働き方を紹介する。
しろくま電力株式会社は、ベトナムの大学と提携し電気技術者の人材育成事業を展開。多くの電気技術者を輩出している。同社の取り組みを人材育成担当者、および現在在籍中の外国人電気技術者に聞いた。
しろくま電力株式会社は、ソーラーパネル付きカーポート「しろくまカーポート」や、系統用蓄電池などの発電所関連事業、法人・個人向けの電力小売事業を中心とするグリーン電力会社です。巻口は子会社のafterFIT Viet Namで電気技術者の養成、トゥは日本の本社で設計・電気検査・竣工検査等を行っています。
日本に1名(トゥ)、ベトナムに2名の計3名です。弊社のIT部門では、すでに多くの外国籍社員が活躍していますが、技術者はまだこれからです。トゥが先陣を切ってくれています。
自社内の別事業で、ベトナムに現地法人を設置し進出する中で、同地の勤勉な国民性が電気技術者にマッチするのではと考えるようになりました。また、日本国内の少子高齢化が進むなか、長期にわたって安定かつ優秀な現場人材を確保するために、海外人材の活用が必要と考え、電気技術者の養成・採用を開始しました。
ベトナム人電気技術者を採用するにあたり、現地の工学系大学と提携し育成プログラムを構築しました。
2020年9月、ハノイ工科大学および電力大学と提携契約を結びました。両大学の電気工学部の学生を対象に、2年間の教育プログラムを開設し、最終的には日本語能力試験(JLPT)のN3レベルと、外国人でも比較的取得が容易な第三種電気主任技術者(電験三種)の資格取得を目指しております。
カリキュラムは2年間にわたり、1年目は大学において日本語の勉強と、ベトナム語による電気関連の授業を実施します。1年目コース終了時に内部で試験を行い、合格者には2年目コースとして、弊社にて電験三種試験に向けた各種科目(理論・機械・電力・法規)の授業を実施。さらにカリキュラム修了後に選抜試験を経たメンバーが、来日の上、第三種電気主任技術者の試験を受験します。合格者は、弊社および希望する企業と面接の上、電気技術者として採用される仕組みです。
ベトナムでの弊社教育担当は、電験三種教育担当として巻口および本カリキュラムを修了し電験三種の資格を取得した現地卒業生2名、日本語教育担当として日越スタッフ3名が担当しています。
また、ベトナムから電験三種を受験するために来日する際、関東電気保安協会の協力の下、同協会の技術研修所を見学するなどの取り組みも行いました。
事業としては開始直後に新型コロナ禍となり、日本での受験が不可能になりました。コロナ禍も終息に近づき、人員の往来が再開した後も、やはり試験受験に際しては実際に来日する必要があり、旅費等の物理的コストが多くかかる点が苦労しております。
また電験の試験問題は当然日本語で出題され、今後日本国内での就職を目指すうえで、日本語習得は大きな課題です。トゥの場合、動画サイトで日本語とベトナム語を同時に聞いて勉強するなど工夫しました。
弊社のメリットとすればやはり若くて優秀な人材を一定数確保できることです。特にベンチャー企業では、同等レベルの大学出身者の採用に苦戦するため、人材不足の解決法となっています。
本事業が評価され、2023年10月にはダナン大学でも正式にコースを開始しました。また当初7名の学生でスタートした本事業は、3年が経ち毎年30名ほどの卒業生を輩出できる段階まで来ました。今後は、現在ベトナムでの教育担当者たちが、弊社蓄電池発電所の主任技術者になるべく、第二種電気主任技術者の資格取得を目指しています。弊社としては、コースの卒業生から毎年4~5名ほど採用したいと考えています。
また、日本の住民票が必要な電気工事士の資格取得や、「高度な日本語ができる電気技術者が欲しい」ニーズに応えるため、日本語教育の強化を計画しています。国籍問わず、人材育成には双方の忍耐が必要です。そのため、受入企業側の環境整備も重要です。人材不足の解決策として開始した本事業が、グローバル人材の育成や海外人材誘致のロールモデルとして、技術者不足解決の一助になれば嬉しく思います。(巻口)
外国人で電気技術者を目指す方にとって、電験はやはり難しい試験です。勉強量が何よりも重要になります。ただ、電験は科目別合格制度があるので、最初は2~3科目しか受からなくても、諦めずチャレンジしてほしいです。また、就職後の仲間とのコミュニケーションには日本語を使うので、資格だけではなく日本語の勉強も大切だと思います。(トゥ)