

幌延風力発電株式会社
※内容は2021年11月時点のものです
風力発電事業を展開する幌延風力発電で、発電所の運営管理、保全管理をしています。月に2回、施設を電気技術者の目で巡視し不具合があれば対応します。事故発生の場合は、復旧対応や原因調査、予防対策の実施などをします。発電所は稚内空港より約62キロの場所で北緯45度線上にあり、臨海地区に施設されているため、塩分の付着により、主にがいし装置の絶縁劣化が進むなどの塩害も予想されるため点検が大事です。その他、稼働状況の確認や月に一度の所内の送受電量、各風車の発生電力量、効率の集計などをしています。現在、発電所のリプレース計画があり準備にも参画しています。
幌延町の風力発電プロジェクトにより第三セクターでJFEエンジニアリングと幌延町が2000年10月に設立。2003年2月に本格始動しました。日本海沿いに位置する発電所の名称はアイヌ語で「浜にある道」という意味の「オトンルイ風力発電所」です。浜の風を受けて回転する風車は、地上から羽根の先まで99メートルあります。1基あたり750kWの風車が28基、年間発生電力量は約5,000万kW・hで年間を通じて安定した電気を生み、風に恵まれています。風車は、3.1キロメートルに渡り一列に整然と並んでいます。これだけ長い距離、直線で整然と並ぶ発電所は、日本では珍しいと思います。発電所は低速で発電できる多極同期型で、風車との間の減速ギアが不要で騒音が小さく、メンテナンスが軽減される特徴になっています。現在、2名で発電所の管理をしています。
降雪や雷、台風など厳しい自然に向きあう環境にありますが、冬は風が強く稼ぎ時でもあります。風車に避雷設備はありますが、ブレードという羽根の部分に激しい冬季雷が落ちたときがあり、ブレードにキズが入り補修が必要になりました。クレーン等の手配をしてブレードを下ろさなければいけませんが、冬期期間は、雪が深くブレードを下ろす作業が困難なため、その時は雪が溶けてからの作業になりました。ブレードの普段の点検は重要で、最近は高所で確認出来ないブレードの小さな傷や異常の確認にドローンを使用し、確認精度・安全性を向上させています。倒壊・破損にそなえ風速25メートル以上になって止めたこともあります。日本海側のこの地域は、吹雪などによって視界が白一色になり方向や地形の起伏が識別不能になるホワイトアウト現象が起き、酷くなれば、年に3回前後、通勤道が通行止めにもなります。大事なことは天気予報を含め、早めの情報確認と事前準備です。11月頃から3月初旬まで1メートル以上の雪が積もり風も強く、吹き溜まりが出来るため、発電所周りの積雪状況を監視し除雪作業なども考慮して管理スケジュールを組みます。特に降雪期間は気象予報に注視し警戒して風車を運転しています。
小学校で教わった理科の電磁石の実験から、電気に興味を持ち子供ながら「電気屋さんになりたい」と思いました。高校で電気を学び、電気主任技術者という資格があることを高校の先生から教わりました。高校の電気科を卒業し北海道旭川市の製紙会社に就職し電気設備全般の保全、設計などに従事しました。製紙会社就職後、そこで稼働しているモーターやトランスなどの機器に接したとき、教科書にあった内容と実物とのつながりに新たな面白さを感じたものでした。そこで電気設備の仕組みを基本から学び、様々な書籍を読んでいるうちに資格取得を考えました。尊敬する工場の先輩から電気主任技術者の必要性と資格は、定年後の再就職にも有利と聞き、取得することにしました。そこで、製紙会社勤務時にまず第三種電気主任技術者の資格を取得し、その後更に第二種電気主任技術者の資格も取得しました。製紙会社を定年後、先輩の紹介で幌延風力発電に入社しましたが、化石燃料の節約、地球温暖化防止に貢献する事業に携わることが出来、今では誇りをもって仕事をしています。
風力発電は、化石燃料に代わり、自然エネルギーを活用し二酸化炭素削減、地球温暖化防止に貢献する大変、将来性のある事業です。風力発電の割合は、年々、増加傾向にはありますが、自然現象依存が故の出力不安定を補うために、発電所単位に蓄電設備が必要で、これが置き換わった形の集約的大容量蓄電ステーションのような施設が各地に出来れば、風力発電の依存度はさらに大きくなると思います。
資格取得の勉強は、若いうちにするのが良いです。目標を見失わず続けることです。私は、仕事の忙しさから第一種電気主任技術者試験の勉強を定年前後から始めてしまいましたが、年齢につれて頭の回転が遅くなり、苦労しました。ただ合否に関係なく、勉強したことは仕事にいかせますので無駄にはなりません。工事設計や保全点検での技術基準との対照、事故解析での計算法など、勉強したことにたくさん遭遇しますし、必ず勉強したことが役に立ちます。それから、ご存じの通り電気は便利でも扱い次第では危険です。電気関連の職を目指す人は、このことを念頭に置き、危険予知の目も養ってほしいと思います。