

国土交通省 東京航空局 函館空港事務所(北海道函館市)
航空灯火・電気技術官
※内容は2021年3月時点のものです
北海道南部に位置し、道内では比較的温暖な地域にあります。空港敷地内には、大型ジェット機が離着陸できる長さ3,000m×幅45mの滑走路1本、航空機の地上通路となる平行・取付誘導路13本、エプロン(駐機場)10バースが整備されています。現在は国内線で航空会社4社が定期就航しています。空港の運用時間は午前7時30分から午後8時30分、空港施設の規模や年間利用客数は新千歳空港に次いで道内2番目です。
使用する電力は、地元の電力会社から高圧6,600Vの1系統で受電しています。受電した電力は、滑走路や進入路などに設置されている航空灯火用電源として使う「照明系統」と、レーダーや航空機との交信機器など無線機器電源を主用途とする「無線系統」の2系統に分かれ、各施設・設備に供給されています。万が一の停電に備え、非常用発電設備をそれぞれの系統に整備しています。
航空灯火施設や無線施設など航空保安用電気設備の整備と運転監視、保守・点検をはじめ、大規模な受配電設備の更新工事といった空港整備事業の監督業務に携わっています。一日の仕事の流れですが、午前中に工事業者との打ち合わせや現場監督・施設巡回を行い、午後は工事発注・施工調整業務、夜間と翌日の工程調整に取り組みます。
航空灯火は、航空機の離着陸や地上走行に必要なものであり、夜間や悪天候時は航空灯火が点灯しなければ離着陸することはできません。函館空港には1,347灯が設置されており、常時、航空灯火施設や灯火用電気設備の監視業務を行っています。管制官との交信や航空機の位置・機体情報を把握するために必要な無線施設も、停止すれば離着陸が困難になります。こうした重要施設を安定して稼働させるとともに、それらに電力を供給する受配電設備もしっかりと管理することが、航空灯火・電気技術官の使命です。
また、停電作業が必要な精密点検の際は運航に影響のない深夜に行います。道内に限らず他空港と作業日が重ならないように日程調整に気を配り、点検作業を確実に行うことで、空の安全・安心を守っています。
航空局の設備は安全性・信頼性とも高く設計され運用されていますが、長期間使用していくことで、劣化などで綻びがでてきてしまいます。保安管理にあたっては、施設の異音や換気口からの雨や雪の吹き込みなど、点検報告書だけでは分かりにくいことをそのままにせず、日々巡回している工事業者の方から詳しく話を聞いたり、自分自身が現場を直接目視し確認することで、不具合・障害が発生する前に、その芽を摘むことを心がけています。
以前は自動車検査の独立行政法人に所属し、検査場で業務に従事していました。もともと交通インフラの整備に興味を持っていたことから、2009年に今の職場に転職しました。学生時代は電子工学を専攻していましたが、勉強の過程で基礎電気工学を学んだ経験があり、交通インフラ整備関連業務の中で少しでも知識のある仕事に就こうと考えました。実際に働いてみると、自分で発注したり、現場監督を行った設備が完成し、交通インフラの一部として残る仕事を達成したときにやりがいを感じますね。
航空局に入る際、航空灯火・電気技術課では主任技術者資格の全員取得を目標にしているという話を聞き、チャレンジすることにしました。普段は業務終了後に自宅に帰ってから試験勉強を行うことが多かったのですが、職場でも資格取得に関する研修の場を設けていただき、効率的に勉強することができました。採用後に勉強に着手し、長期間かかりましたが、昨年合格できてうれしかったです。
他部署が整備工事を設計する際、新たに電気設備を設置するが、既存の分電盤で対応できるかという打診がありました。試験の際に必要だった容量計算をしてみると、分電盤の改造と配線用遮断器の変更が必要であることが判明しました。当該部署からは「設計段階で改造が必要だと分かって良かった。契約してからでは運転開始期日に間に合っていなかったので助かった」と言っていただきました。
電気設備の管理・工事に関する知識を活用し、自ら提案、指示できますし、将来的に空港の主任技術者として任命されれば、総合的に管理する役職への道も開けると思います。
函館空港は今年3月に民営化されました。これにより、航空灯火施設などは空港運営会社が管理し、航空局は電力会社からの受電施設および無線施設に関する電源管理が主体となります。当面の大きな目標は今回の民営化に伴う電源設備の更新・改修を無事故で完了させることです。1月以降、官・民の監視分離に対応したケーブルの敷設や装置改良、航空灯火用電気設備の更新を実施しました。現在は受配電設備の真空遮断器と保護継電器の更新作業を進めています。
電気主任技術者は需要が高く、活躍できる場面の多い資格です。私自身、合格までに時間がかかりましたが、根気よく資格取得を目指してほしいと思います。