

ふるさと熱電株式会社
技術部 わいた地熱発電所(熊本県小国町)
※内容は2020年5月時点のものです
地熱発電は地下のマグマの熱エネルギーを利用します。「生産井」という井戸を掘って高温の蒸気を取り出し、タービンを回して発電します。再生可能エネルギーの一つですが、太陽光や風力発電と異なり、天候に左右されず一年を通じて安定的に発電できるのが特徴です。
当発電所は、地下の蒸気を直接利用するフラッシュ方式を採用しています。地熱発電では主流となっており、発電効率が高いのがメリットです。最大出力1995kWで、2015年6月に本格運転を開始しました。地元の方々が立ち上げた合同会社わいた会が地域活性化の一環として事業化し、当社はわいた会から発電所の運営を委託されています。
発電所内の電気室やタービン発電機室に設置されている電気設備の保守関連工事などを担当しています。電気主任技術者が行う通常点検において、電気設備に異常が確認された場合、電流・電圧を測定するなどして原因を調査し、必要な修理や部品交換などの対策を講じます。たとえば、ポンプの調子が悪ければ、配線を外した上でメンテナンスを施すことがあります。
これまでに所内で事務所拡張が必要となった際、電源の分岐や変圧、専用コンセントの設置、ブレーカーの増強といった電気工事の設計・仕様の決定や補機類の設置作業に取り組みました。掘削作業でポンプやコンプレッサーなどを使うときに電源を引いてほしいという要望にも対応しました。大きな発電所ではないので、生産井のメンテナンスなど電気以外の業務にも幅広く携わっています。
地熱発電所は運転を続けていると、生産井の鋼管の内側に蒸気に含まれる炭酸カルシウムなどが固体化し、「スケール」として付着します。それによって蒸気の噴出量が減り、発電量に悪影響を及ぼします。従来はドリルを投入して削り取っていましたが、年間で合計40日間は運転を停止しなければならず、その分、稼働率が下がってしまいます。停止期間を短くするため、私が中心となってスケール抑制設備の設置プロジェクトを推進しました。薬液を坑内に注入してスケールの発生を抑える方法を取り入れるとともに、電源は発電所の電気を使用することとし、所内動力盤から分岐させ、変圧器で電圧を下げて供給する設計としました。
今回の設備を導入した結果、昨年はスケール除去作業で運転を止めることもなく、加えて当社チームが日々協力して行なう業務改善活動の成果もあり、稼働率は従来の約80%から約95%に向上しました。安定運転に貢献していることを実感できましたし、稼働率が上がれば収益も向上するので、わいた会の皆さんにも喜んでいただけたと思います。大きなやりがいを感じますね。
もともと京都出身で、地元の高校の商業科を卒業後、自動車メーカーに就職しました。退職後は熊本に引っ越して、田舎暮らしをすることが決まっていたので、人と関わりのあるライフラインの仕事で技術・知識を磨きたいと考えていました。約半年間、熊本の職業訓練校に通って電気設備を学び、第二種電気工事士を受験して2013年7月に合格しました。
第一種の試験にも挑戦し、翌年1月に合格しました。試験勉強に当たっては、日にちが空くと忘れてしまうことがあったので、短時間でも継続することが大事だと痛感しました。試験2カ月前からはどんなに忙しくても一日最低30分は勉強の時間をとりました。
その後、熊本県南小国町の黒川地区で温泉旅館や一般家庭の電気工事の仕事で経験を積み、第一種の免状を取得できました。現在の会社に入社したのは、地域の活性化につながる、この地域ならではの地熱エネルギーを活用する事業に大きな魅力を感じたからです。
試験でも出題される絶縁抵抗計の取り扱いは役に立っています。漏電箇所や断線の可能性のある回路を、絶縁抵抗計を使って発見することもありました。測定機器を扱えることで円滑に業務を遂行できましたし、制御盤内の危険ポイントや測定方法を運転員とも共有することで、安全確保にもつながっていると思います。
電気の容量計算は設計に生かされました。送水ポンプを設置するにも電源がなければ使用できません。適当に電源をとってくると、容量オーバーでブレーカーが落ちたり、配線の選定を間違えると事故の原因になりかねません。そこで容量計算を用いて最適な回路や配線の太さを選定し、設計に反映させています。資格を持っていると自信を持って仕事に取り組めます。
電気技術者の資格を取得すれば、都会や田舎に関係なく働くことができますし、どこの地域に行っても働き口が確保されることが魅力の一つだと思います。また、自分の努力次第でさらにステップアップできる職種でもあります。当然、上級の資格になれば難易度も高くなり、仕事においては責任の重みも増してくることになりますが、それだけの対価とやりがいを得られると感じています。
個人としては、電気主任技術者になりたいと考えています。わいた地熱発電所のように2000kW規模の発電所では第三種の資格が必要なので、まずは第三種で1科目の突破を目指したいと思います。
現在、隣接地に第2わいた地熱発電所(5000kW)の建設工事も始まっており、そこで電気工事士としても活躍する場が出てくればうれしいですね。さらに、完成後の第2わいた地熱発電所で主任技術者のポジションにつけるように努力していきたいと思っています。