佐々木 秀将 さん
令和元年度

電力網の安定を支える最新鋭設備
保守技術を積極的に学び、伝える

佐々木 秀将 さん
佐々木 秀将 さん

北海道電力株式会社 送配電カンパニー

(※2020年4月から北海道電力ネットワーク株式会社に組織変更)

函館支店電力部 変電グループ(北海道)

保有資格
  • 第三種電気主任技術者(2007年度)
  • 第一種電気工事士(2006年度)
  • 第二種電気工事士(2006年度)

※内容は2020年3月時点のものです

現在のお仕事の内容を教えてください。

北海道の函館エリアで、電気所(変電所、開閉所、変換所)の保守を行う部署に所属しています。設備に異常がないか巡視点検を行ったり、修繕の工事管理をしたりするのが主な仕事です。

電気所はすべて無人化され、遠隔監視しています。私たちは普段は函館市内の事務所にいて、何かあれば現地に急行します。 

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担当している電気所の中で、特徴的な施設はありますか? 

エリア内に32カ所ある電気所の大半は変電所ですが、その中の一つに北斗変換所(北斗市)があります。2019年3月に運転を開始した、北海道の電力系統と本州の電力系統をつなぐ送電設備「新北海道本州間連系設備」(新北本連系設備)の北海道側の最新鋭の設備です。これまでにも津軽海峡の海底を通るルートの連系設備はありましたが、新しく青函トンネルの作業坑内を通る新北本連系設備ができたことで、どちらかのルートの設備が点検や故障で停止しているときにも、常に電力融通のための一定の容量が確保できます。新北本連系設備は北海道の電力安定供給の維持や、再生可能エネルギー導入拡大のために非常に重要な設備です。

現代の電力網では、発電所から家庭のコンセントまでほとんどの場面で交流の電気が使われていますが、この連系設備の区間は直流送電を行っています。変換所は交流から直流、直流から交流へ電気の変換を行う施設です。直流で系統間をつなぐことで、一方の電力系統で事故が起きてももう一方に影響が波及しにくい、長距離送電時の電力ロスが少ないなどのメリットがあります。

北斗変換所では、交流・直流の変換を行う交直変換器に「自励式」を採用しました。直流送電を行う設備としては「他励式」しか日本国内では実績がなく、自励式は初めての 採用となります。他励式変換器が動作するためには外部電源として交流系統の電力供給が必要ですが、自励式は交流の電力系統が停電している場合でも、起動・運転できる機能を持っています。自励式の導入は2018年の北海道の全域停電(ブラックアウト)以前から決まっていましたが、新北本連系設備では北海道がブラックアウトの場合にも変換器を起動して本州からの電力融通を受けられることになります。

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変換所ならではの仕事や、心がけていることはありますか? 

私は入社後一貫して変電部門の仕事を経験してきて、2018年に新北本連系設備の建設工事の担当になり、運転開始前の各種試験などを行いました。運転開始後も引き続き北斗変換所の保守などを担当しています。変換所には変電所にない設備があるうえ、国内初の自励式変換器ということもあって、勉強しなければならないことが多いです。その意味で運転開始前から変換所の建設工事に携わって経験を積む機会を得られたのはありがたかったです。変換所や直流設備の知識・技術を持つ人は社内でも限られるので、これからもさらに積極的に技術の習得を重ね、新しく配属された人たちに継承していきたいです。

また、電力の安定供給にとって重要な設備ですから、異常の早期発見や迅速な対応ができるように心がけています。例えば交直変換器は運転時に熱が出るので大掛かりな冷却設備が必要ですが、普通の変電所にはそうしたものはありません。外観をチェックしたり、冷却水の温度や流量などのデータを細かく管理したりして、異常の兆候を見逃さないようにしています。

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電気の仕事を目指すようになったきっかけと、電気技術者の資格を取得した経緯を教えてください。

中学生の頃だったと思いますが、数日間の停電を経験したことがあって、電気のありがたみを実感しました。そこで電力供給という責任重大な仕事をしたいと思うようになり、工業高校の電気科に進み、今の会社に入社しました。 

電気工事士の第一種と第二種は、高校在学中に取得しました。第三種電気主任技術者は入社1年目に合格できました。1年目は仕事がそれほど忙しくなかったのと、会社も若手に資格取得を奨励しているのが後押しになりました。勉強では各科目の市販のテキストや過去問題集に加えて、高校時代の教科書も参考になりました。

第二種電気主任技術者には一昨年から改めて挑戦していて、一次試験3科目に合格しましたが、今年度は合格できませんでした。来年度はなんとか一次試験に合格し、二次試験に挑戦したいと考えています。ただ、三種を取ったあとすぐに二種も受ければよかったと少し後悔しています。入社2~3年目に仕事が少しずつ忙しくなって資格の勉強から離れてしまいましたが、年齢とともに忙しさは増していくので、勉強時間を確保することが難しくなりました。これから取得を目指す人も、できれば若くて勉強の仕方を忘れないうちに受験されるほうがいいと思います。

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資格取得のために学んだことは仕事の中で役立っていますか?

私の仕事分野では、電気主任技術者試験で学んだ内容が直結することが多いです。例えば変電所に設置する機器の定格を検討するときには三相短絡電流の数値が必要ですが、その計算に理論科目の内容が役立ちました。社内で標準の値は決められていますが、なぜそうなっているのか、その標準が今回も適当なのかをわかっているかどうかで、仕事の進め方やいざというときの対応も変わってきます。ほかにも、機械科目では変圧器の仕組みや、変電所の制御に必要なシーケンスの基礎知識などを学びますし、法規科目では社内検査の計画策定に必要な関連法規の知識などを得ることができました。

また、工事や作業の多くは工事会社が行い私たちは工事管理を担当しますが、実際のやり方をある程度知っていなければ適切な指示ができません。このようなときには、電気工事士の受験のときに工具類の使い方などを身に付けておいてよかったと思います。

電気の仕事をするうえで、資格は実務上も役立ち、自分の将来にプラスになりますので、頑張って取得を目指されることをおすすめします。 

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