松本 和啓 さん
令和元年度

西日本豪雨をきっかけに一時Uターン
父と二人三脚、ふるさとで電気工事

松本 和啓 さん
松本 和啓 さん

松本電気工事店(愛媛県西予市野村町)

保有資格
  • 第二種電気工事士(2011年度)

※内容は2020年2月時点のものです

電気工事の道に進んだきっかけと、これまでの経歴を教えてください。

生家の松本電気工事店の倉庫が、小さな頃の遊び場でした。様々な工具があって、「これ、何に使うんやろ」と自然に興味が湧いたことを覚えています。その後、高校に入ってからは、アルバイトで父の現場に出してもらい、電気温水器を運ぶのを手伝ったりしていました。

高校は、(西予市に隣接する)八幡浜市にある県立八幡浜工業高等学校の電気技術科です。第二種電気工事士の資格は、高校1年の時に取得しました。電気技術科の1年生は全員取得することになっていたためです。

当時、学校では日に1~2限は専門の授業があり、家でも毎日1~2時間は試験のための勉強をしていました。電気技術科の同級生は放課後も基本的に部活はせずに試験勉強をしており、大体みんな一回で合格していました。

2013年度に高校を卒業し、大阪の電気工事会社に就職しました。その後、2018年7月に発生した西日本豪雨で地元が被害を受けたのをきっかけに、現在働いている実家の松本電気工事店に戻ってきました。

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西日本豪雨の際、ご実家のある西予市野村町は、町内を流れる肱川の氾濫により、浸水や停電など大きな被害を受けたようですが? 

当時は、大阪の会社の寮で一人暮らしをしていました。氾濫の発生した日(2018年7月7日)は、当初、現地の報道が少なく、様子が分かりませんでしたが、そんな時に実家の父からLINE(ライン)で写真が送られてきました。その写真では、見慣れた近所の家が水に浸かっていて、これは大変なことになったと驚きました。自分の目で状況を確かめたいと思い、翌日、近くの町出身の同僚と一緒に地元へ駆けつけました。道路状況がよく分からず、到着するまで随分時間がかかりました。自宅はかろうじて無事でしたが、近くにある倉庫は1階が浸水しました。

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その後はどういう経緯で、ご実家で働くことになったのでしょうか? 

倉庫の片付けなどをしながら2週間ほど実家で過ごした後、ひとまず大阪に戻ることにしました。大阪の職場は愛媛県出身者が多かったので、「大変だろうから、実家を手伝った方がいいのではないか」と親身になってアドバイスして頂きました。父も復旧でかなり忙しい様子で、電話で何度か話をするうちに、「それなら落ち着くまで一緒にやろうか」という結論になりました。大阪の会社に急いで手続きをして頂き、翌8月には退職して実家に戻りました。

実家に戻った当初の仕事は、どんな内容でしたか? 

浸水した家の絶縁調査をしていました。分電盤で絶縁抵抗を測定し、大丈夫ならブレーカーを入れる、駄目ならその回路の電線を調べて悪い所を修理する、という手順で行います。電線を接続するボックス内に水が溜まってしまい、そのせいで漏電しているケースが多かったです。 

先に述べた通り、実家の倉庫も浸水しましたが、一度水に浸かってしまったものでも、プラスチック製の材料など、洗って再利用できるものを使ったので、材料が足りなくなることはありませんでした。ただ、ドリルやレーザー水平器などの電動工具は倉庫の1階に置いていたため、全て駄目になってしまいました。そのため、買い換えた時に倉庫の2階にしまっておいた古い工具を引っ張り出してきて使っていました。

その頃のことで特に印象に残っているのは、被害が大きかったお宅で作業をした時の光景です。そのお宅は川に近く、地下と1階がすっかり水に浸かりました。毎日の生活で使っていた家具や日用品がめちゃくちゃになった中で作業をしていて、被害の大きさと深刻さをあらためて実感させられました。 

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西日本豪雨から1年半ほど経ちました。最近の仕事内容はどう変わりましたか? 

今年(2019年)の夏頃までは忙しかったですが、かなり落ち着いてきました。最近は新築住宅の配線工事などの仕事が多いです。

大阪で勤めていた時は工場の配線工事が主でしたが、こちらでの仕事はほとんどが木造家屋の配線工事なので、仕事のやり方も異なります。例えば、木造家屋の方が材料の加工がしやすい、といった違いがあります。最初の頃は勝手が分からず、父の後ろをついていきながら、少しずつ覚えていきました。

将来は、このまま跡を継ぐ考えですか? 

大阪時代の先輩から仕事の誘いを受けています。地元も復旧が進み、大分落ち着いてきましたので、そちらに行こうかと考えているところです。 

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日々の仕事をしている中で、資格の勉強が役に立ったことはありましたか?

大阪で仕事していた時は、ブレーカーサイズを決めるための電力量計算などは、番頭さん(職長)がやってくれていました。そのため、自分たちは工事だけに集中することができました。一方、こちらでは、例えばIH等の設備を入れる場合に自分の頭で考えなくてはいけません。昔勉強した内容を思い出しながら自分で計算し、父にも聞いたりしながら仕事に取り組んでいます。

今後の目標は?

新築住宅の場合、建築図面は大工さんが作りますが、電気配線の方は我々のような電気工事店が図面を引くことがあります。これまでは父の担当でしたが、最近は自分でも挑戦しています。「これでどうやろ」と父に見せても、ほとんど直されてしまうので、直されずに一回で納得させられる図面を書きたいですね。

それともう一つ、第一種電気工事士の資格を取りたいと思っています。高校3年の時に受けてみたのですが、その時は落ちてしまいました。祖母からは「資格はいくらあっても腐らない」とよく言われていますし、電気関係の資格は取れるだけ取っておけば、今後何かの役に立つのでは、と思っています。

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