

株式会社 ユーラステクニカルサービス
取締役・西日本事業統括(島根県)
※内容は2019年9月時点のものです
再生可能エネルギー発電事業を展開しているユーラスエナジーホールディングス傘下で、発電所の運用・管理をしているユーラステクニカルサービスに所属しています。島根県出雲市の「ユーラス新出雲ウインドファーム」の電気主任技術者を務めるとともに、西日本事業統括として、福島から鹿児島までの風力発電所・太陽光発電所の責任者も務めています。
各発電所の稼働や電力販売収支の状況を見たり、安全の確認などを行ったりするため、あちこち飛び回っています。その分、新出雲では設備が安定しているときは現場の点検・確認作業などを担当者に任せ、結果の報告を受け、確認する体制をとっています。もちろん、例えば事故時の対応などは、私自身が現場に出て指示をしています。
日本海に面した島根半島の山地に、出力3,000kWの大型風力発電機を26基設置しています。合計78,000kWは2009年4月の運転開始当時で国内最大、現在でもトップクラスの規模です。事業所は現在、10人で発電所の管理などを行っています。
立地としては、冬場の風が強く、この時期が稼ぎ時です。そのため、冬は発電に集中できるようにメンテナンスは10月までに終わらせるよう年間計画を立て実施しています。一方で、最大の脅威が冬季の雷で、1日に100発くらい落雷を受けた日もありました。雷が来そうなときは事前に風車を止めるのですが、運転を再開したときにブレード(羽根)が外れて公衆災害になるようなことは絶対に防がなければいけないので、必ず損傷がないか目視確認して大丈夫なときだけ再開するよう徹底しています。
大学では制御工学を学んでいて、最初は大手電機メーカーに就職しました。その後、転職し地元の鹿児島のホテルで設備管理の仕事をしているときに、高圧電気設備の運用や補修計画の企画などもできるようになりたいと思い、第三種電気主任技術者を取得しました。ホテルの主任技術者を務めているときは、保守管理だけでなくいかに省エネを実現するかという仕事も多く、他社の省エネのコンサルティングなどの仕事もやっていました。また、第二種は仕事で必要というわけではなかったのですが、もう少し上を目指してみたいという気持ちで挑戦し、第三種の4年後に合格しました。
そうした中で、次は新エネルギー関連の仕事をしてみたいという気持ちがわいてきました。特に風力は風車、発電機、その間をつなぐ増速機、ブレードの角度(ピッチ)を調節する機構など機械的な稼働部が多く、いろいろな事象が発生してやりがいがありそうだと思いました。ちょうど鹿児島で風力発電所の建設計画があり、その運営会社に話を聞きに行ったところ、第二種の資格を取得していたこともあり、『ぜひ来てほしい』と言われ転職、発電所建設工事の主任技術者を務めました。完成後その会社を辞め、一度設備管理の仕事に戻ったのですが、今度はユーラスが鹿児島に風力発電所をつくるということを知り、やっぱり風力の仕事がやりたくて今の会社に移りました。その発電所で建設から運転開始後まで主任技術者を務めた後、新出雲に異動して今に至ります。
当初は風力がまだ普及し始めた時期だったこともあり、思った以上にトラブルが多かったです。前線が通過して風向きが急激に変わると、風車のヨー制御機構(風向きに合わせて風車の向きを変える装置)が壊れてパーツ交換が必要になることがたびたびありました。また、発電所を運転開始した数カ月後に落雷で送電線が損傷して全停電になったこともありました。そのときは応急処置で1週間後に仮復旧しましたが、全面復旧には半年かかりました。
最近は風車のタワー内に昇降機が設置されてパーツ交換が楽になるなど、装置の品質や作業環境がかなり改善されてきました。しかしブレードが破損すると交換のために大型クレーンを手配しなければならなかったり、特別な部品が故障すると代わりがなかなか手に入らなかったりして、復旧に時間がかかってしまいます。
大切なのは異常の予兆を早めに発見し、必要に応じて部品を交換するなどの予防保全を行うことです。特に音や振動はそうした予兆を示してくれることが多いので、毎月風車に昇って点検するときには必ず確認します。ほかにも軸受けのグリースが漏れていないかといった状態なども毎回チェックします。
課題を自分で解決したり、自分たちで現場を改善してトラブルをなくしたりして、順調に運転できているとやりがいを感じてモチベーションにつながります。例えば、送電線に落雷して停電になったとき、自動で再送電する設備がもともとなかったのですが、自分たちで設計して導入したことがありました。外注するより安く稼働率を上げることができ、達成感がありました。
電気主任技術者試験(電験)を受けていたのは40歳前後の頃ですが、当時は電車通勤の30分、往復1時間が勉強の時間でした。電車の中はほかに気をとられることが少なく、意外に集中できたと思います。大事なのは、30分だけでも毎日続けることです。続けることで学んだ内容が着実に身につきます。
また、送電ケーブルの事故点がどこかを調べる方法に「マーレーループ法」というのがあって、電験の勉強の中でも学ぶのですが、実際に事故が起きたときに使用し、かなり正確に故障の位置を特定することができました。試験範囲には仕事で役立つ内容もいろいろありますので、しっかり理解してほしいと思います。
私もそうでしたが、自分で「この資格がほしい」と思ったときが取得のチャンスだと思うので、思い切ってチャレンジしてください。