吉岡 雅人 さん
令和2年度

京都・先斗町の無電柱化を推進
景観と防災に配慮した街並み実現へ

吉岡 雅人 さん
吉岡 雅人 さん

関西電力送配電株式会社

京都支社 電力本部 京都配電エンジニアリングセンター(京都市)

保有資格
  • 第一種電気工事士(2007年度)
  • 第二種電気工事士(1996年度)

※内容は2020年12月時点のものです

京都有数の花街・先斗町で無電柱化に取り組まれています。経緯と工事の概要を教えてください。

先斗町通りは南北約490mにわたり、お茶屋や飲食店が軒を連ね、古都の風情が感じられる街並みです。情緒ある雰囲気を地域や観光客に満喫していただけるよう、京都市や当社、その他の共同事業者が連携し、景観や防災面を考慮して、「無電柱化」を決定しました。

通りには合計18本の電柱があり、これらを全て撤去し、電線を地中化します。道幅は最小で1.6m、平均でも1.8mと非常に狭いのが特徴です。ここまで道幅が狭い場所での無電柱化は全国的にも珍しく、技術的にも困難を伴います。地域の皆さまのご協力を得ながら、景観を損なわない電力機器の設置方法の検討や地上機器の開発などを試行錯誤しながら取り組んでいます。

現在、通りの北側半分は電柱撤去を終えて、工事を完了しました。地域の皆さまから「景色がとてもきれいになった」と声をかけられ、やりがいを感じています。今後は南側で架空から地中へのケーブルのつなぎ替えや、電柱撤去など仕上げの作業を進め、2021年秋頃の完工を目指しています。

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無電柱化以前(左)と工事後(右)の先斗町通り歌舞練場付近

工事ではどのような役割を担っていますか?

2017年9月に工事はスタートしました。私は前任者を引き継ぎ、2019年6月から現場担当者として、工事設計書の作成や工程管理業務に携わっています。例えば電線類の埋設工事を進めるにあたり、電気事故の防止や保安の確保を常に念頭に置いて、関係企業やお客さまとの連携、施工会社との調整を行っています。特に架空線から地中設備への切り替え作業では、停電時間の調整をはじめ接続切り替えの位置決め、お客さまのご都合などを総合的に勘案する必要があり、電気技術者として力を発揮する場面だと考えています。

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狭い場所での工事は苦労も多いのでは? 

電線を通す管路などの埋設スペースが限られている上、既設のガス管や水道管といった他のライフラインへの配慮も必要です。さらに工事車両の使用が制限されるため、材料の運搬、道路掘削などでは人力での作業が多くなり、工程が思うように進まないこともあります。工事は深夜時間帯に行うのですが、沿道は飲食店も多いため、歩行者の安全に気を配りながら、工事音の抑制にも努めなければなりません。

こうした課題の克服にあたっては、例えば、既設ライフラインへの影響を避けるために、工事箇所の試験堀調査を確実に実施し、支障がある場合は想定していた埋設ルートの変更を行いました。道路を掘削した場所には、土砂を埋め戻す作業も必要ですが、運搬は人力に頼らざるを得ず、時間がかかります。このため工事が日々続く場所には、直径5㎝ほどの球体で、軽く強度もある簡易埋め戻し材を活用しました。この球体を数百個単位で袋に入れ、掘削坑内に敷き詰めることで、埋め戻しの土砂の運搬回数を削減し、作業時間の短縮に努めました。通行される方々の安全確保の面では標識の設置方法や交通整理員の配置などに配慮して作業を進めました。

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電気技術者を目指すきっかけは?

幼少の頃から、おもちゃや機械を分解して遊んでいたので、仕事は技術職に就きたいと考えていました。電気は生活に欠かせないものという両親の助言もあり、高校は電気科に進学しました。第二種電気工事士の資格は勉強の一環として在学中に取得しました。

卒業後は、学んだ知識を存分に発揮したいと思い、現在の会社(当時は関西電力株式会社)に1997年4月に入社し、配電線地中化工事一筋に歩んできました。入社後、第一種電気工事士の資格は知識を習得するためにも持っておいた方がいいと思い、自主的に勉強を始めました。筆記は1回目、技能は2回目で合格し、2007年6月に免状を取得しました。高圧分野まで知識の幅が広がったことはよかったと思っています。

資格取得で得た知識や技術が役立っていることは?

第一種の試験勉強と資格取得を通じて、お客さまの電気設備がどのようになっているか、またどのように受電しているのかをイメージすることができました。高圧受電のお客さまのケーブル切り替えなどで安全面の配慮に役立っていますし、お客さまとの調整の際も、一定の知識があることで説得力をもって対応できていると思います。様々なトラブルが発生したときに、電気理論を駆使して課題を解決することもありました。

これから資格取得を目指す人に対してメッセージを。 

業務で関わる電気主任技術者や電気工事業者の方々は電気について深い知識を持っていることが多く、私自身にとっても資格保有がステータスになっていると感じています。電気事業に従事するにあたっては、保有しておくべきだと思うので、若いうちにしっかりと知識を習得すべく、資格取得にチャレンジしてほしいと思います。

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今後の抱負をお聞かせください。

無電柱化事業は社会的にもニーズが高まっています。工事においては官公庁や沿道のお客さまの協力が必要不可欠です。より一層円滑な事業の推進とともに、課題である整備コストの抑制に向けて電気事業に携わる技術者として創意工夫をしながら取り組んでいきたいと考えています。

電気設備工事は完成して終わりではなく、保守メンテナンスは20~30年と続いていきます。将来を担う後輩の疑問や質問にもしっかりと答え、技術やノウハウを伝承し、長く安全に設備を守っていければと思っています。

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