佐久真 順輝 さん
令和2年度

熊本城天守閣の電気設備復旧に尽力
史跡を損なわぬよう細心の注意払う

佐久真 順輝 さん
佐久真 順輝 さん

株式会社弘電社 九州支店

工事部工事二課 主事

保有資格
  • 第一種電気工事士(2001年度)

※内容は2020年11月時点のものです

2016年4月に発生した熊本地震で大きな被害を受けた、熊本城天守閣の復旧整備工事に携わっているそうですが、お仕事の内容を教えてください。

熊本城天守閣の大天守・小天守は1960年に鉄筋コンクリートで再建されたもので、内部は歴史資料の展示施設になっています。2016年の熊本地震の際には、大天守の瓦崩落、大天守・小天守台石垣の一部崩落などの大きな被害がありました。弊社はこれら天守閣の建築工事や内部の展示工事にかかわる電気設備工事を行っています。大天守の外観復旧はほぼ完了し、2019年10月から一般への特別公開が始まりました。天守閣内部は2021年4月から一般公開される予定です。

私は2017年7月に初めて現地に乗り込み、まずは現地の被害状況や既設設備の確認・調査など工事の準備に取りかかりました。その結果を踏まえ、天守閣の建築工事の工程や施工図を元に、電気設備工事の工程や施工図を作成していきました。施工に際しては、現場の管理も行っています。

電気設備工事に携わる人数は工事の状況によって変動しますが、管理者が私を含め1~2名、作業員が4~5名といったところです。弊社にとっては、規模的にはそれほど大きな現場というわけではありませんが、国の特別史跡であるため非常に緊張感があります。

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他の電気設備工事の現場とは、どのような違いがあるのでしょうか?

熊本城では、宇土櫓(うとやぐら)(本丸の北西に建ち、築城時以来現存する五階櫓)をはじめとする13棟の建造物が国の重要文化財に、また、城跡全域が国の特別史跡にそれぞれ指定されています。特別史跡においては、文化財保護法に基づく許可をいただかなければ掘削作業を行うことができません。また、特別史跡内で作業する場合には、事前に図面を作成し、市の許可をいただいた上で、市関係者の立ち会いのもとで施工します。万が一にも史跡に影響を与えることがないよう、慎重な作業が求められます。

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写真提供:熊本城総合事務所

具体的には、これまでにどのようなご苦労がありましたか?

天守閣の弱電用ケーブルを敷設する際、当初は配管を埋設する予定だった区間で掘削作業を行うのが難しいことが分かり、露出配管で施工することになりました。石垣の上にケーブルラックを載せてルートをつくり、そばを通る観光客の目に触れることのないように、目隠しの板を張るなど工夫しました。

また、天守閣内部の展示工事にかかわる電気設備工事においては、当初計画していたよりも電気容量が増えることが分かったため、回路を分け、分電盤を分散化することで対応することにしました。しかし、既設の天守閣の中ですので、スペースには限りがあります。狭いバックスペースに設備を収められるよう苦心しました。 

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そもそも電気設備工事の仕事に興味を持ったきっかけや、これまでのご経歴について教えてください。

小さいころから電気機器類に興味があり、壊れたカセットレコーダーを分解して、組み立て直したりしていました。プラモデルをつくるのも大好きでした。それで、手に何か職をつけたいと思い、工業高校の電気科に進学することにしました。

仕事に必要な資格を取得したのは、就職してからです。第一種電気工事士のほか、一級電気工事施工監理技士の資格を2005年に取得しました。産業用太陽光発電設備や無線基地局の電気設備、官公庁の電気設備の現場管理業務などを行っていました。その後、現在の弘電社に移り、6年目になります。

資格取得に当たっては、仕事をしながら勉強しなくてはならなかったので大変苦労しました。仕事が終わった後で講習会に参加したり、毎日復習したりしましたし、さらに休みの日には集中して机に向かい、知識を身に付けていきました。

これまでのお仕事の中で、資格取得のために勉強した知識や技術が役に立った経験はありますか? 

民間のマンションの案件で、自分で電気容量を計算し、電気設備の設計図や見積書を作成したことです。当時勤務していた会社は官公庁工事がメインでしたが、官公庁工事の場合は、電気設備の設計についても建築工事の設計事務所と打ち合わせしながら決めていました。しかし、このマンションの場合はオーナー様の住宅を兼ねた小さめの物件でしたので、電気設備の設計はこちらに全て任されました。住宅部分とマンション部分のそれぞれの電気容量を計算し、それに合わせてケーブルのサイズを割り出したり、トータルの電気容量を計算したりするのに、資格取得の際の勉強がとても役に立ちました。

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最後に、後進の方々へのアドバイスをお願いします。

やはり向上心を持って取り組んでいってほしいと思います。技術というのは奥が深く、ここまでやったら終わりだ、ということがありません。私自身、何十年仕事をしていても、さらに先があると感じています。世の中の進歩に追いついていくためにも、ずっと勉強し続けなくてはならないと肝に銘じています。

その一方で、現場でのあいさつやコミュニケーションもとても大切です。電気技術者は、建築工事の関係者やお客さまなど様々な立場の方々と意思疎通を図りながら仕事を進めていかなくてはなりません。コミュニケーションを通じて、相手が求めているものをうまく引き出し、形にする力が求められると思います。

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