真謝 永二 さん
令和元年度

求められることはなんでもやる
離島の暮らし守る誇りを胸に

真謝 永二 さん
真謝 永二 さん

プラス合同会社

代表社員(沖縄県)

保有資格
  • 第一種電気工事士(1994年度)

※内容は2020年2月時点のものです

どんなお仕事をされているか教えてください。 

沖縄県の西表島で電気設備工事会社を営んでいます。といっても電気だけではなく、総合的に、地域のニーズがあれば何でもやっています。水道やガス、土木関係の工事もやりますし、水道関連では島の浄水場の管理も請け負っています。家電が故障したとか窓ガラスが割れたという場合も当社に電話がかかってきて、対応することが多いです。

車では行きにくい場所や近くの別の離島にもすぐ行けるように自社で船を持っているのですが、平常時にもその船を活用するためシュノーケルなどマリンスポーツのツアーを企画、関連して宿泊施設も経営しています。シーズンオフにはそちらのスタッフにも、可能な範囲で工事を手伝ってもらっています。

色々なことをやっているので、島内の行事などにもほとんど協力しています。重機で砂浜を整地したり、学校のグラウンドを整備したり、幼稚園に遊具を建てたり、おかげであちこちから感謝状をたくさんいただいています。

interview37_img02.jpg

電気工事の世界に入ったきっかけは何ですか?

実家が島の電気工事会社だったのですが、もともと自分はその道に進むつもりはありませんでした。岡山県の大学に入り、4年生の夏休みに帰省したときに超大型台風が襲来し、電柱がなぎ倒されたり自動車がひっくり返るような状況で約2週間停電になりました。その間、実家の仕事を手伝いながら、父や会社の人たちが不眠不休で復旧作業に取り組む姿を見て、また島の人たちからとても感謝されるのを見て感動し、島に戻ってこの仕事をしようと決めました。

父の会社は電柱を建てたり配電線の工事をしたりといった電力会社から受ける仕事がメインでした。大学卒業後は父の会社に入って経験を積んだ後独立し、電力の仕事だけでなく民間の内線工事にも仕事を広げました。現在では内線と水道の仕事が中心になっています。

interview37_img03.jpg

電気工事士の資格取得に向けてはどんな勉強をしましたか?また、その経験が仕事に生きていると思うことはありますか?

電気工事の仕事に進もうと決めたその年に、第二種は飛ばして第一種電気工事士の試験を受け、合格できました。大学では直接電気の勉強をしていたわけではありませんが、分野として大きくは離れていない応用物理学を学んでいたので、筆記試験の勉強にはあまり違和感なく取り組むことができました。自分にとっては技能試験の方が難しかったです。夏休みの間は父の会社を手伝い、岡山に戻ってからは家が電気工事会社を営んでいる友人がいたので、卒業までアルバイトをさせてもらって経験を積みました。

島には電気に詳しい人が少なく、内線工事会社は当社くらいのため、本当にいろいろな相談や連絡を受けます。資格取得のために幅広く電気の知識を付けたおかげでそうした場面にも対応でき、ありがたがられています。

設備工事業として、離島特有の苦労する点はどんなところですか? 

資材の調達が難しいところです。特に冬場は海が荒れて船が欠航になることが多く、緊急に必要なものがあってもなかなか手に入りません。資材が一つ足りないことで、現場がすべて止まってしまうこともありますから、必要なものはなるべく多く在庫を確保しておくようにしています。また、物にしろそれを整備する人にしろ、海上輸送で来てもらうには時間もコストもかかるので、できるだけ有るものを大切に使うよう心がけています。

大型の台風が来たときもやはり大変です。島の人は対策に慣れていますし、最近は台風が来る前に関係各所が体制を整えておくようになって、だいぶ復旧が早くなりました。それでも漏電などが多く発生して対応に追われます。ただ、作業を終えて真っ暗だった島にパッと明かりが付いたときの感動はいつになっても変わりません。 

以前に比べて変化を感じることはありますか?

昔は西表島への電力供給は石垣島からの海底ケーブル1回線だけで、電圧変動などが大きく不安定でしたが、今は2回線になってかなり安定しました。ただ、最近は島が世界自然遺産に登録される可能性が高くなってきたこともあって観光施設の建設などが増えており、電力需要が急増しています。これに対応するため、沖縄電力が新しい変電所の建設などを進めています。私たちも新築工事に携わることが増えています。

自分の仕事でいうと、昔は台風復旧のときなどはトランシーバーで各所と連絡をとりながら作業をしていましたが、今は島のほとんどの場所で携帯電話がつながるようになって非常に便利になりました。 

仕事において心がけていることや、電気工事の世界を目指す後進に伝えたいことを教えてください。 

島においては、特に電気などのライフラインは言葉通り直接命にも関わる存在です。それを自分が守っているという誇りは常に持っていたいと思いますし、守れたという実感を得たときはこの仕事をやっていてよかったと思います。これから電気工事士を目指す人たちにもそういう気持ちを持ってほしいです。電気工事士などの資格は、こうした誰かのためになる仕事に携わっていくための第一歩ですから、頑張って取得を目指してほしいです。

それと、各人のアイデンティティーを大切にしてほしいとも思います。資格を取ってただ仕事をするのではなく、自分が今その場所にいる意味や将来どうしていきたいかを考えることが大切です。そのアイデンティティーに気付くには、取った資格を活かして積極的に色々な経験を積むことが必要だと思います。 

西表島には高校がなく、ほとんどの子は石垣島の高校に行きます。そこで工業高校の電気科を卒業しても、なかなか西表島に戻ってきてくれる人はいません。それに離島にいると講習などを受けるのが難しく、資格取得に不利だという面もあります。そんな中でも当社のスタッフを含めて頑張ってくれている人たちがいますし、島の暮らしを守る仕事を目指す人が増えてくれるとうれしいです。 

interview37_img04.jpg

その他のインタビューをみる