

アサノ電設株式会社
工事部(埼玉県)
※内容は2019年12月時点のものです
実家がさいたま市で電気工事会社を営んでいて、そこで働いています。現場の職人をしていたのですが、子どもが生まれてからは保育園の送り迎えなどもあるので、社内での材料の発注や積算・見積書の作成などの仕事が中心です。どの材料がどれくらい必要かなど、現場で学んだ知識は事務仕事でも役立っています。
とはいえやっぱり現場が好きなので、会社から近い場所の現場調査など、行ける範囲でときどき現場には出させてもらっています。このあたりは家族の会社だから融通がきく部分でもあって、助かっています。
もともと電気工事の仕事をするつもりはなくて、父が会社でどんな仕事をしているのかもよく知りませんでした。高校卒業後、美容が好きで美容専門学校に入ったのですが、好きだということと仕事にするということは違うという現実に突き当たり、4カ月ほどで辞めました。それで入学金と授業料を親に返済しようと思い、アルバイトとして当社に入り、現場で荷物運びや配線のお手伝いといった補助的な作業に従事しました。やってみたら思いのほかそういう仕事が自分に合っていると感じ、返済が終わった後で2013年4月に正社員として入社しました。
また、私は4人姉妹の次女なのですが、このままだと会社を継ぐ人がいない、祖父がつくった会社を途絶えさせたくないという気持ちもありました。
体を動かすのが好きだったり、学生のときもクラスの代表委員をやるなど人を動かして何かをやり遂げていくのが好きだったりという性格に合っていたと思います。汗をかきながら仕事をする姿はかっこいいと思ったし、男性がほとんどでサバサバした空気もいいと思いました。
現場では電柱に登る場合も女性は身軽だし、ピット(立坑)や配管の中など狭い場所の作業では小柄な女性の方がやりやすい場合もあります。いろいろと気がつく女性がいることで現場がきれいに保てたり、空気が明るくなるという面もあると思います。最近は扱いやすくて見た目もかわいい作業道具なども増えていて、女性でもやる気さえあればできる仕事になっています。
最初の頃は現場に女性用トイレがないことが多くて困りました。よく近くの公園やコンビニに走ったものです。特に浄水場の仕事をしたときは、現場が広くて大変でした。それから、現場ではどうしても力仕事があります。特に電線は重いです。ある学校の工事のときは電線をかついで1階から4階まで何度も上りました。電気工事では安全のため必ず長袖長ズボンですから、あの時はかなり汗をかいて体重が落ちました。
第二種電気工事士試験には、入社した年の夏に合格しました。学科の方は実作業の経験がなかったことで、かえって先入観なく覚えられてよかったかもしれません。実技は祖父に見てもらいました。絶対合格するという気持ちでしっかり勉強すれば、第二種は短期間でも合格は可能だと思います。
約5年後に合格した第一種では、父が実技の講師役でした。教え方はなかなかスパルタ式でしたが、家だけでなく現場でも父の姿を見て覚えることでいろいろな知識を身に付けることができました。学科の方は数学が苦手なこともあって苦戦し、2回不合格になりましたが、なんとか合格しました。
入社したときに「やるならとことんやろう」と決意して資格試験に取り組み、第一種まで取得できました。この業界では資格を持っていることが強く、おかげで若い上に女性だからと軽く見られることもありません。資格を取るまでが大変ですが、取ってしまえば長く働けるのは魅力だと思います。
当社では住宅の仕事が多く、ほかにも工場や病院、自治体・官公庁のお仕事などもやらせてもらっています。完成した建物を見るとわくわくしますし、子どもに「この建物はママが工事したんだよ」と話せるのは誇らしいです。
案件で言うと、初めて現場代理人を務めた市の街灯のLED化工事は、書類作りから全部自分でやったこともあり、達成感が大きかったです。それから、もうすぐ自分が通っていた高校で改修工事が始まるのですが、実は私が通うかなり以前の改修工事から当社が関わっていたことを最近初めて知りました。今度は自分が携わることができてうれしいです。
もっと現場数をこなして、他の資格なども取得し現場で指揮をとれるようになりたいです。また、女性の電気工事士をもっと増やしていきたいとも考えていて、もし女性だけの電気工事会社をつくったら、すごくきれいな現場や工事ができるのではないかという夢があります。
ただ、女性に限らず男性も現場に若手が少なくなっているのが気になります。電気工事の仕事に触れる機会が少ないとか、電気は目に見えなくて怖いというのがなかなか増えない理由でしょうか。電気工事の職人がいなければ今の生活は成り立ちませんし、職人の働く姿はかっこいいと私は思っているので、少しでも多くの人に興味を持ってほしいと思います。