内山 宣昭 さん
令和元年度

極寒の南極で電気設備と隊員の命を守る
国内と全く違う環境も貴重な経験に

内山 宣昭 さん
内山 宣昭 さん

株式会社 関電工
東京営業本部 東京支店 西部支社 施工チーム(東京都)

保有資格
  • 第一種電気工事士(2008年度)
  • 第二種電気工事士(2005年度)

※内容は2019年8月にHPに掲載したものです

これまでの簡単な経歴を教えてください。

工業高校の電気科を卒業して2007年に関電工に入社しました。新入社員研修後、最初の2年は技能五輪電工職種の選手として技能を磨き、東京都代表として全国大会に出場しました。その後は都内の現場で屋内配線の電気工事に従事してきました。
そして2016年11月から約半年間、国立極地研究所の第58次南極地域観測隊夏隊に初めて参加し、昭和基地の電気設備の保守管理や設営などを担当しました。翌年の2017年11月からは第59次隊の越冬隊として、約1年半の間南極で過ごしました。

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南極観測隊に参加することになった経緯を教えてください。

当社は1986年から毎年、南極観測隊に技術者を派遣していますが、技能五輪選手時代の指導員が南極観測隊の経験者で、話を聞いたのがきっかけでした。支社にも経験者が数人いて、話を聞く中で興味が高まっていきました。他社ではなかなかできないことをやってみたい、厳しい環境の中で自分の技術力を試してみたいという気持ちで、社内選考などを経て参加が決まりました。決まったときはうれしい反面、家族と長期間離れることに不安もありましたが、家族が後押ししてくれて気持ちが固まりました。

観測隊での内山さんの役割と、昭和基地の電気設備について教えてください。

第59次越冬隊での隊員は32人で、観測隊と設営隊が半々くらいです。設営隊は施設の設営やメンテナンスをする人だけでなく、医者や料理人なども含みます。私はその中の機械担当として、電気・空調設備の設営、保守管理などを行いました。とはいえほとんどの担当は1人しかいないため、自分の担当範囲以外の仕事も協力しあってやります。

おかげで隊員同士の絆が深まり、今では第二の家族や一生の仲間といった関係になりました。

昭和基地には隊員が生活する棟や観測設備など、大小約70の建屋があります。発電設備はメインのディーゼル発電機に加え、太陽光発電と風力発電があります。電気が止まると隊員の命に関わるので、その施工やメンテナンスは重要な役目です。

建屋内の電気設備は基本的に国内の仕様と同じですが、屋外の設備は厳しい寒さや紫外線といった自然環境に耐えられる仕様になっています。例えば国内で一般的なCVケーブルではなく耐久性の高いキャブタイヤケーブルを使用していたり、接続部の防水処理をより厳密にやる必要があったりして、慣れるまでは大変でした。また、地面が凍土や岩で、含まれる水分もほぼ純水なので電気を通さず、アースを設置できないため、原則として非接地なのも珍しい経験でした。

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南極ならではの仕事や経験、気をつけなければならないことなどはありましたか?

夏季は南極観測船「しらせ」からの物資搬入に加え、大型重機を使えるので、建屋の建設工事や老朽化した機器の更新・補修など大掛かりな作業が入り、作業量も多くなります。冬季は、一日中太陽が出ない"極夜"やブリザード(暴風雪)があって屋外作業がほとんどできないので、設備のメンテナンスや不具合の対応が中心になります。

冬は外気温がマイナス30度にもなります。ブリザードで屋外のケーブルが破断したことがあったのですが、ケーブル自体が凍ってしまっているため、その場で解凍しながら補修しなければなりませんでした。接続などの細かい作業は分厚い手袋では難しく、極寒でも素手でやる場合があります。凍傷になったりケーブルが凍ったりしないうちに作業を終わらせなければならず、時間との勝負でした。

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南極で学び、国内の仕事でも生かしたいと思っていることはありますか?

段取りや準備の大切さ、コミュニケーションの大切さは、より強く実感しました。

時間勝負の作業では、事前の準備が重要になります。ほかにも、昭和基地では年1回しか物資の補給ができないため、限られた搭載量で、発生するトラブルを想定してできるだけ使いまわしできるものなどを準備する必要があります。
また、人数も時間も限られる中では、その日の予定を共有したり、仕事を手伝うときに進め方を把握したり、しっかり意思疎通することが大切です。いろいろな職種の人と話すことで自分の視野を広げることにもなりました。こうした経験は日本でも生かしていきたいです。

現在、日本ではどのような仕事をされていますか?

今は、都内の大型スポーツ施設の建設工事で施工を行っています。これまでは病院や大学などで新築工事に関わることが多く、普通のビルより仕様が厳しい分、勉強になりました。
現場では、先輩方からそのやり方を学ぶ一方、若手がいるときは彼らがOJTで現場の様々な仕事を学べるように心がけています。自分自身の施工技術にはある程度自信がありますが、職長のような立場でチーム全体をまとめていく力はまだまだ足りないので、もっと経験を積んでいきたいです。

電気工事士の資格を取得したときは、どのような勉強をしましたか?

第二種は高校在学中に取得しましたが、私の学校は電気科といってもみんなが電気工事士を取るという体制ではなかったので、ほぼ独学でした。分からないことは科の先輩に聞いたり、父や祖父が電気工事士だったので教えてもらえたのは大きかったです。
第一種は、技術系社員はみんな取るよう会社が奨励していて、筆記も実技もバックアップ体制が整っていたのはありがたかったです。一種はやはり二種よりレベルが高くて、中には高校在学中に合格する人もいますが、自分の場合は難しかったと思います。

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これから資格取得を目指す人に伝えたいことはありますか?

私は学生時代に資格勉強をする中で現場施工に興味を持ち、電気工事業界に入りました。これがきっかけで後に南極に行ったり、大型の案件に携わったりと貴重な経験ができました。資格を取ることは将来の選択肢や可能性を広げると実感しています。また、受験のために学んだことは今でも必要なときに振り返ったり、他職の人に説明するときに役立ったりしています。

電気工事は建設工程の最初から最後まで関わるので、現場への思い入れは深くなります。建物に初めて明かりが灯ったり、建物が実際に多くの人に使われているのを見ると大きなやりがいを感じます。これから電気技術者を目指す人たちにもそういう喜びを味わってほしいと思います。

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