今井 優 さん
令和元年度

仲間と刺激しあって勉強しステップアップ
幅広い知識で超高層複合施設の安全を守る

今井 優 さん
今井 優 さん

森ビル株式会社
管理事業部 施設管理部 虎ノ門管理グループ 虎ノ門ヒルズ森タワー

チームリーダー(東京都港区)

保有資格
  • 第一種電気主任技術者(2002年度)
  • 第二種電気主任技術者(2000年度)
  • 第三種電気主任技術者(1997年度)
  • 第一種電気工事士(2003年度)
  • 第二種電気工事士(1996年度)

※内容は2019年6月にHPに掲載したものです

「虎ノ門ヒルズ森タワー」という超高層施設で、どのような仕事を担当されていますか?

施設全体の管理を担当しています。電気設備関連の業務の比率が高いですが、防火・防災や内装工事関連など、電気以外の業務も少なくありません。
私が所属する虎ノ門ヒルズ森タワーの管理部隊は10人のチームで、私はそのビル責任者です。日々の業務としては工事の手配や点検表・日誌の確認などがありますが、これだけの大規模ビルになると目を通さなければならない書類の量も多く、かなりの時間を事務作業に費やしています。それでも、電気設備の自主検査については自分で日程調整や立会いなどを行っています。

建物の概要と、それに伴う管理の難しい点を教えてください。

虎ノ門ヒルズ森タワーは地上52階建てで、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、カンファレンス施設、さらに約6,000㎡のオープンスペースなどで構成された、超高層の複合施設です。受変電設備は、メインとなる特別高圧電気室が1カ所、その電気を各フロアに送るサブ電気室が7カ所設置されています。
施設ごとに特有の事情があるので、点検の日程調整などもできるだけ要望を尊重できるようにしています。例えばホテルは休業日がなく全体を一斉に停電させることはできないので、ホテル客室4フロアを2フロアずつに分けて点検します。また、特別高圧電気室は4ブロックで構成されていて、停電検査は1ブロックずつ日時を分けて行います。停電検査中も残りの3ブロックでビル全体に電気を供給できる構成になっているので、全館停電にはなりません。
このほか、サブ電気室の停電検査では、消防設備やエレベーターなどの重要設備は他の停電していないサブ電気室からバックアップ回路で電気を供給し続けられるようにしています。その分、点検前後にバックアップ回路の切り替え作業が必要で、単純に全停電するより手順が複雑になります。操作ミスがないようチェック体制を整え、検査後は反省会を行って毎年マニュアルを見直しています。

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写真提供:森ビル

これまでで印象に残っているエピソードはありますか?

ひとつは2014年の虎ノ門ヒルズ森タワーオープンの時です。オープンに備えて、トラブルがあればすぐ対応できるよう、完成前から現地確認や関係者との打ち合わせ、点検表の作成など準備を重ねました。建物は一つ一つ構造が違いますから、この建物に最適な保守・管理を行うためには、現地を良く見て理解し、準備することが大切です。オープン当初を大きなトラブルなく乗り切った時や、初回の電気設備自主検査を問題なく終了した時はほっとしました。
また、当施設は2018年度に地球温暖化対策の優れた事業所として、東京都の「トップレベル事業所」に認定されました(※)。高効率熱源システムやオフィスエリアにおけるLED照明システムの全面的な採用といった取り組みの積み重ねに加えて、審査には膨大な量の資料を収集・作成する必要があり、ほぼ1年がかりでようやく認定を得られたことは非常にうれしかったです。

https://www.mori.co.jp/company/press/release/2019/02/20190228140000003843.html(外部サイト)

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今のように電気設備の管理者になるまでの経歴を教えてください。

高校は工業高校の電子科に入りました。卒業後はエンジニアの派遣社員として自動車用の電子基板の設計などを経験した後、現場作業の仕事にあこがれて通信系の工事会社に転職し、電話や監視カメラ、自動火災報知機などの工事に携わりました。さらにデパートの施設管理会社に移り、7年ほど従事しました。電気工事士と電気主任技術者の資格はこのときに取得しました。そして、現在の森ビルに2003年に入社しました。

働きながら資格の勉強をするのは大変だったのではないですか?特に難関として知られる電験(電気主任技術者試験)一種まで合格できた要因を教えてください。

もともとは当時の同僚が第二種電気工事士の資格を取得していたので「自分も頑張らなければ」と思ったことがきっかけでした。私と同僚でお互いに刺激し合いながら、一つずつ上の資格に挑戦していきました。一人だとやる気が出ない人は、同僚を誘ってお互いに頑張る状況をつくるといいと思います。あとは率直に言って、当時毎月の給料に資格手当がついたのもモチベーションになりました。
勉強は独学で、通勤の電車の中や、宿直時の合間の時間を使ってやっていました。やはり電験一種の、特に計算問題はそれまでとはレベルが違って非常に難しかったです。しかし解けなかった問題が解けるようになるとうれしいという気持ちが原動力になって、勉強を続けることができました。

資格のために学んだことは、どのような場面で役に立っていますか?

電験の知識はビル管理の仕事で間違いなく役に立っていますね。電験では幅広い分野の知識を求められます。
おかげで協力会社や業者との技術的な打ち合わせもしっかり理解して判断できますし、電気以外の設備に関する打ち合わせにもある程度ついていけます。
電気工事士の資格は今の仕事に直接必要というわけではありませんが、テナントが新規入居する際の電気設備のチェック、照明器具の交換、コンセント回路の変更など、役に立つ場面があります。自宅の電気工事も簡単なものは自分でやっています。

仕事におけるこれからの目標はありますか?

虎ノ門ヒルズ森タワーの近隣では、当社のものも含めてさまざまなプロジェクトが進んでいます。今後さらに多くの人が集まる街になっていく中で、より安全への配慮を高めていきたいと考えています。そのために、災害を想定したマニュアルの作成や訓練などに取り組んでいきたいです。
若手の人材育成にも力を入れたいと考えています。停電検査のような、実際に高圧設備を見て理解を深められる機会を活用していきたいです。

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これから資格取得を目指す人たちにアドバイスを。

電気の資格はステップアップが可能です。第二種電気工事士から始めて、徐々に難しい資格に挑戦することで、電気主任技術者の二種や一種も夢ではありません。電気の資格は持っていると確かに就職に有利です。私が森ビルに入社できたのも、資格のおかげで電気の知識が十分あると判断されたからでしょう。少なくとも、試験勉強で得た知識は必ず役に立ちます。最終的に自分のためになりますから、努力を惜しまないでください。

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