髙増 良 さん
令和6年度

森林未利用材を活用したバイオマス発電
持続可能な事業を目指す

髙増 良 さん
髙増 良 さん

株式会社グリーン発電大分 天瀬発電所
技術グループ リーダー

保有資格
  • 第二種電気主任技術者(2022年度)
  • 第三種電気主任技術者(2013年度)
  • 第一種電気工事士(2023年度)
  • 第二種電気工事士(2001年度)

※内容は2024年5月時点のものです

現在のお仕事内容を教えて下さい。

木質バイオマス発電所である天瀬発電所の電気主任技術者として、停止計画等の送配電事業者との連絡調整、各種設備の年次点検計画作成、従業員の保安教育などを担当しています。ほか、当直として日常点検業務や電気関連トラブルの対応、改善策の提案なども行っています。

電気主任技術者および電気工事士の資格取得の経緯を教えてください。

もともと工業高校の電気科に進学しており、高校2年生で電工二種を取得しました。その後、電工一種の試験に合格しましたが、就職時には電気と関係ない仕事に就いたこともあり、実務経験が足りず免状の申請を行っておりませんでした。
転機となったのは東日本大震災です。当時、再生エネルギーが注目され始めており、再エネ関連の仕事に転職したいと考え、高校時代に挑戦したものの不合格だった電験三種の資格取得を目指し、勉強を始めました。働きながら受験し、高校時を除いて3回目の受験で合格し、ちょうど求人のあった現職に転職しました。業務を行う中で、電気設備の保安業務が実務経験になると気づき、電工一種の免状を申請、取得しました。

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資格取得の上で苦労したことはありますか。

電験の出題範囲は幅広く、参考書を一周すると最初の範囲を忘れてしまいがちです。退勤帰宅後や休日を活用し、同じ分野を反復学習することで理解を深めました。科目で最後まで残ったのは法規で、科目別合格制度を活用し2年かけて合格しました。

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日々の業務に資格や受験勉強がどのように役立っていますか。

天瀬発電所は木質バイオマス発電所ですが、構造上はボイラーを用いた火力発電所です。火力発電所は電験の電力科目で出題されるので、主な機器の構成を受験勉強で学習することが出来、理解が早かったです。
電気回路のトラブルについても同様です。受験勉強の内容が業務に直結していると思います。

天瀬発電所は、木質バイオマス発電所という珍しい発電所です。同発電所の特徴を教えて下さい。

弊所は開設11年目になります。所在する日田市は江戸時代には幕府の天領となるほど林業が盛んな土地柄ですが、木材輸入自由化による価格下落により、産業構造が変化する中で、山中に放置された森林未利用材(間伐材や低質材など)が大きな課題となっていました。
そこで、2012年に始まった「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」を契機に、森林未利用材の有効活用や地域の雇用創出、森林環境の保全を目的とした弊所を2013年に開設いたしました。弊所は「電力の地産地消」を掲げ、森林未利用材を買い取り、チップ状に加工して燃料化します。発電された電力は一般家庭約1万世帯分になる約5,000kWとなり、市内の小中学校や公的機関、民間企業に送電されます。未利用材によって間伐された森林には植林することにより、カーボンニュートラル・持続的な事業を実現しています。
また、弊所は火力発電所には珍しく山中に設置されているのも特徴です。災害時には地域住民の避難所としても利用できるようになっております。

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バイオマス発電所を運営していく中で、苦労した点や仕事のやりがいはありますか。

苦労する点は正直多いです。まず燃料となる木質チップが不揃いで、材質によって含水量や空隙が異なります。燃料材質によってボイラーの出力も異なるので、常に監視する必要があります。また、樹皮などの形状が悪い燃料が搬送設備に詰まると、チップの搬送を停止して掻き出さなければなりません。ボイラー自体、木質バイオマス発電所としては初期の設計なので、運転が上手く行くよう改良を施すなど試行錯誤しています。
他には、山中に発電所があるので雷の影響を多く受けます。落雷で瞬低や送電線の停電、雷サージなどで運転に影響を受け、その対策にも苦労しています。
苦労ばかり話してしまいましたが、仕事自体は和気あいあいと楽しくやれています。地域の生活や地球の環境を支えているんだ、という誇りを胸に日々業務につとめています。

環境保護や地域の雇用維持等、同発電所は持続可能性の高い事業として注目されています。今後の目標は。

自治体や地元企業とともに、発電事業だけでなく将来の森林づくりのために育苗事業を開始しました。育苗された苗木を植林し、山林資源の保全につとめています。また、未利用材の切り出しや運送、チップ製造を地域内で完結することで、雇用も創出しています。

仕事や資格に関する今後の目標を教えてください。

前任の主任技術者が発電設備や火力のことに博識でしたので、その方に近づけるように知識を増やしたいです。そのうえでいつかは第一種電気主任技術者(電験一種)を取ることが目標です。

電気関連の職業や電気技術者の資格取得を目指している方にアドバイスをお願いします。

電気関連の職業の需要は増えています。その中で資格保有者は就職し易いですし、特に電験は有利だと思います。ただ、「受けてみよう」と思っていると中々受験できないのでまずは資格試験を「受けてみる」、「取りかかってみる」ことが大事ではないでしょうか。

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