活躍する電気技術者達

定年後も知識と経験を生かし
最新鋭再エネ発電所で活躍

活躍する電気技術者達
  • 佐藤 清則さん
    サミット酒田パワー株式会社
    酒田バイオマス発電所 所長
    発電部長 電気主任技術者
    (山形県酒田市)
  • <保有資格>
  • 第二種電気主任技術者(2002年度)
    第三種電気主任技術者(1982年度)

――酒田バイオマス発電所の概要を教えてください。

 2018年8月に営業運転を開始したバイオマス発電所です。仕組みは基本的に火力発電所と同じですが、燃料として木質バイオマスを使用する循環流動層ボイラを採用しています。当発電所では、県内から運んでくる木質チップと、海外から輸入する木質ペレット、PKS(ヤシの実の種の殻)を使っています。出力50,000kWは、木質バイオマスの発電所としては東北最大級です。

――その中で、佐藤さんの役割は?

 2015年に当社に入社し、建設工事中は電気主任技術者として、工事計画から使用前自主検査まで一貫して携わりました。使用前自主検査では工事計画書に沿った設備ができているか確認するため、電気工作物の検査要領書を作成し、絶縁耐力試験などの検査に立ち会います。検査項目はかなり多くなりますが、それを一つ一つ積み上げていくことで最終的に運転が可能になります。
 運転開始後は発電所の電気主任技術者と発電部長の職に就き、12月からは発電所長も務めています。輸入した燃料を保管するペレット倉庫の電気主任技術者も兼任しています。運転開始して間もないですから大掛かりな点検や修繕などはまだありませんが、日常的な点検・巡視の確認などを行っています。
 運転や保安に関するルールの整備もこれから進めていかなければなりません。運転や点検の手順を定めた要領書は既にありますし、他の発電所のルールも参考になりますが、この発電所の運転は設備も人も初めてのことだらけです。限られた社員数の中で現場にマッチするように、安全性を維持しながら合理的・柔軟にルール化していく必要があると思います。

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――酒田バイオマス発電所ならではの難しい点などはありますか?

 燃料の管理が大変ですね。特に遠隔地から輸送するチップは供給を安定させるのが難しく、水分率や熱量もその時々で変わります。他の燃料とのバランスを考えながら使用する必要があります。また、燃料を運ぶコンベヤラインも故障がないように気を使います。これはLNG(液化天然ガス)や石油にはない心配ですね。
 それから、発電所は日本海に面しているので塩害に気をつけなければいけません。碍子などをきちんと掃除したり定期的に交換するなど、ちゃんと手入れしておけば大丈夫ですが、怠ると絶縁破壊に至って火災が起きることもあります。

――この発電所に来るまでの経歴は?

 近隣にある酒田共同火力発電所(酒田共火)に入社し、定年まで勤めました。酒田共火では発電設備を運転する発電グループ、メンテナンスを担当する技術グループ、環境対策や省エネなどに携わる環境グループをローテーションさせてオールマイティーな技術者を育てる方針だったので、私も一通り経験しました。同じ設備でも立場が変われば見方が変わることを知ることができ刺激的でしたし、バイオマス発電所を一から建設する際にも経験が役立ちました。
 発電所はさまざまな設備の集合体であり、電気以外にも色々な知識や資格が必要になります。私もローテーションする中で電気主任技術者以外に、エネルギー管理士(電気・熱)、ボイラー・タービン主任技術者、第一種公害防止管理者(大気関係・水質関係)を取得する必要がありました。

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――酒田共火時代に印象に残っていることはありますか?

 東日本大震災のとき、酒田共火も停止したのですが、再起動するために問題になったのが工業用水でした。送水管が破断して工業用水が使えないなか、県を挙げて協力していただき、給水車でピストン輸送して水を確保しました。酒田共火が発電を再開したことで、その電力を使ってより大きい火力発電所も起動でき、東北の幅広い地域への電力供給再開につながりました。協力していただいた地域の方々には本当に感謝しています。

――電気主任技術者の資格は、どのような経緯で取得しましたか?

 電験三種(第三種電気主任技術者試験)は1982年に受験、合格しました。電験は発電所に不可欠な資格ですが、その分既に持っている先輩が大勢いたので急いで取る必要がなく、先に公害防止管理者やエネルギー管理士を取得していました。当時の電験三種は今と違って6科目、マークシートではなく筆記で、科目合格もなしの一発勝負でした。ですが先に取った資格と勉強する範囲がかなり重なっていたこともあり、それほど勉強に苦労したという記憶はありません。毎年資格試験を受けていくのが当たり前というような雰囲気が会社の中にあり、寮生活で学生の延長のような気持ちで勉強できていたのも良かったのだと思います。

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――電気主任技術者の資格があってよかったと感じたことはありますか?

 震災のときは主タービンの油圧低下によって発電所の停止に至ったのですが、当初はその原因がわかりませんでした。電験を含めてこれまで学んできた知識や経験を総動員して原因を調べ、周波数の変化をグラフ化して分析することで、電力系統の周波数低下に引っ張られて発生したものだと判明し、再起動に向けた対応を進めることができました。このように仕事の中のさまざまな場面で、勉強したことが生きてきます。
 また、私が定年後に、今の発電所の建設や運営に携わることができたのは、電気主任技術者の資格があったからです。取得することで、仕事や人生の選択肢を広げることができると思います。特に風力や太陽光発電設備が増えて電気主任技術者のニーズも増えていますから、今後はよりその傾向が強まっていくはずです。