活躍する電気技術者達

「常に成長したい」気持ちで積極的に挑戦
電気工事の技能で日本一に輝く

活躍する電気技術者達
  • 小栁 剛之さん
    株式会社電興社(佐賀県佐賀市)
    工務部工務課主任
  • <保有資格>
  • 第一種電気工事士(2006年度)
  • 第二種電気工事士(2005年度)

――現在のお仕事について教えてください。

 電気工事、主に屋内配線工事の現場管理を担当しています。お客さまや、建物自体を造る建築会社の担当者との打ち合わせ、作業員の手配と作業の指示、図面や書類の作成など、現場が円滑に進むようにするのが仕事です。
 今は、隣接する市でごみ処理施設の新築工事に携わっています。他社とJV(共同企業体)を組み全体で2年弱かかる大規模な工事のため、現場に常駐して電気工事を進めています。

――これまではどのような経歴を積んでこられましたか?

 もともと、父が建築の仕事をしていて、自分は建設業の中でも少し違うことがしてみたいと思って高校は電気科に入りました。電気工事士の第2種と第1種は高校在学中に合格しました。2種は入学してすぐに受験しますが、1種も2年生以降で受験する体制が整っていたのが大きいですね。

 卒業後、空調工事中心の会社と、太陽光発電工事が中心の会社で現場作業をしていましたが、より電気工事士の資格を生かせる場面が多い仕事をしたいと思うようになり、屋内配線が中心の今の会社に転職しました。今の会社でも作業員として現場で実作業を行っていましたが、2年ほど前から現場管理をやるようになりました。

――2016年に、電気工事技能競技全国大会(全日本電気工事業工業組合連合会主催)の一般の部で金賞を受賞、日本一になられました。まず、大会出場のきっかけは?

 予選にあたる佐賀県大会に、当社からは若手を中心に毎回2人出場しています。私は前回、ちょっとしたミスで4位になって悔しい思いをしたので、もう一度出場させてもらいました。
 でも、本来は全国大会には出られないはずだったのです。県大会で2位、九州大会では7位で、出場権を獲得できませんでした。ところが、県大会1位で出場する予定だった人が急に出場できなくなり、大会の2カ月ほど前に急遽代理出場を打診され、出場できるならと即答しました。

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――本番までの練習と、大会当日はいかがでしたか?

 急に決まったということもあって、最後まで練習と現場の仕事を並行してやっていました。当時は現場管理に部署異動したばかりで、現場から会社に戻ってきてから、送られてきた競技課題の資料に沿って、配線や配管、制御などを独学で練習しました。私は飽きやすい性格なので、短期間に集中するやり方が合っていたのだと思います。
 予選でいい成績ではなかったのに出場することになってプレッシャーもありましたが、楽しむことが大事と思って本番に臨みました。当日は落ち着いて作業することができ、技術的にも見栄えの面でも100%に近い力を出せました。それでも結果がどうなるかはわかりませんでしたが、最後に金賞で自分の名前が呼ばれたときはとてもうれしかったです。

――日本一になって、変わった事などはありましたか。

活躍する電気技術者達

 自分や会社の名前を知ってもらえる機会が増えましたね。これまで接することがなかった人とコミュニケーションを取れる機会も増えて、うれしいです。それに日本一の称号が持つ信頼感はすごくて、作業内容などについても「あなたが言うならそうか」と納得してもらえることがあります。その分、信頼を裏切るような失敗はできないという重圧もありますが。
 優勝しなければ一生経験できなかったことをいろいろと経験させてもらっているので、その一つ一つを大事にしていきたいです。

――電気工事士の資格についてお聞きします。取得してよかったと感じるような場面はありますか。

 作業員から現場管理に移って、電気工事士試験のために勉強したことがものすごく役に立っています。管理の担当者だと、自分で計算したり図面を描いたりしなければいけませんから、あいまいな知識ではできません。そんなとき、試験で勉強した内容を使う場面がたくさんあります。
 例えば電気の計算式一つとっても、単相と三相で計算の仕方が違いますが、学生のときは正直意味もよくわからずに暗記していました。実際に現場で計算する立場になって、なるほどこういう時に使うのか、と理解できました。
 学生のときから実技は大好きで、自慢ではないですが学年でもトップクラスでした。一方で計算問題は苦手で、現場で作業したいから資格を取るのに、これって役に立つの?と思っていました。でも仕事をしていると、やっぱりちゃんと身に付けた知識は役に立つんだなあ、と実感します。

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――今後ご自身がさらに成長していくための目標などはありますか?

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 現場管理の仕事をしていると、建築や、電気以外の設備の知識も必要だと感じます。それを学ぶために、社外や幅広い職種の人と話すことを心がけていますし、例えば消防関係など、他の分野の資格もとってみたいです。資格自体を得るだけではなく、その勉強をすることで知識を身に付けたいですね。
 そういう意味では電験3種(第3種電気主任技術者)も、今のところ仕事に直接必要というわけではありませんが、知識の幅を広げるという意味で挑戦したい気持ちはあります。いつ、必要な仕事が急に入ってくるかもわかりませんし、常に成長して、最終的には「電気ならこの人に聞けば大丈夫」と思われるようなオールマイティーな存在になりたいです。

――これから電気工事士などの取得を目指す人に伝えたいことは。

 電気工事についてはまず資格を持っていないと始まりませんし、資格は知識を持っていることの証明にもなります。今は必要と思っていなくても絶対取得してよかったと思うときが来るので、全力で取り組んでほしいです。
 それと、働きながら勉強するのはなかなか大変なので、興味がある学生さんがいたら、学生のうちに挑戦することをお勧めします。