活躍する電気技術者達

〝電気工事のプロフェッショナル〟として長年にわたり海外プロジェクトに携わる

活躍する電気技術者達
  • 千田諭さん
    株式会社 ユアテック
    営業本部 海外事業部 課長
  • <保有資格>
  • 第一種電気工事士(1996年度)
    第三種電気主任技術者(2006年度)

――海外には何年勤務されたのですか?

ベトナムでの勤務が通算9年、インドが1年と、合計10年あまり海外で仕事をしたことになります。初めてベトナムに赴任したのは1995年。当時は、当社がベトナムに本格進出する足がかりになった現場が2つ動いており、ここでの仕事に携わったのが海外勤務のスタートになります。当社は1996年にホーチミン、翌1997年にハノイに現地事務所を構え、2011年には現地法人を設立しました。現在は、日本人社員と130人ほどいるベトナム人の現地スタッフが協力して、受注したプロジェクトに取り組んでいます。

――現地では主にどのような業務を担当されてきましたか?

建設現場における電気工事の現場代理人です。現場代理人とは、建築工事における電気工事全体を取り仕切る現場監督です。実際に現場に出向き、図面通りの電気工事が行われているか、現場技術者の工事手順や方法は適切か、などを入念に管理するのが役割ですが、その際電気工事士試験の勉強で学んだ知識が役に立ちます。
ベトナムでは、日本人の同僚や現地スタッフと協力しながら、工事全般の管理業務から、安全・品質管理業務、営業までを含めた、海外工事におけるマネージメント全般を手がけてきました。
これまで、当社のベトナム事業は、同国に進出する日系企業の工場建設に伴う電気工事が全体の9割以上を占めていました。ただ、最近では高層ホテルや事務所ビル、商業施設、倉庫など、工場以外の受注案件も増えてきました。

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――海外プロジェクトならではの苦労は?

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ベトナムは現在も右肩上がりの経済成長を続けており、都市化も進んでいます。しかし、私が最初に赴任した22年前は道路も満足に舗装されておらず、ホーチミン市内は自転車だらけで交通事情も悪い。今なら、市内から40分ほどで到着する現場に、当時は2時間かけても着かないことがざらでした。このため、現場近くに宿舎を借りて泊り込み、現場に通う日々でした。また、工事に必要な材料の調達や、職人の確保に苦労したことが思い出されます。
ほかにも、日本では当たり前に購入できる電気工事用の部材が手に入らないことにも苦労しました。もちろん、コストをかければ海外から高品質の材料や部品を輸入することはできます。しかし、施主様のニーズは、一定水準の品質を維持しながら、コストを抑えることです。現場代理人としては、品質とコストのバランスを考え、判断していく必要があります。
ときには現地で手に入る材料を集めて部材を自作することもありますが、代わりの部材で施工品質は確保できるか、また人件費が安い現地では部材にコストをかけるより人手をかけた方が安価で高品質な施工が可能ではないかといったことなどを考慮し、取捨選択を重ねながら、施工方法や材料調達などをトータルで考えていく判断力が求められます。

――施工品質を確保するための取り組みは?

日本国内の工事では、現場の職長さんのスキルが高く、細かく指示を出さなくても、計画通りに、あるときはこちらの想定を上回る工事品質、仕上がりになることがあります。しかし海外では、当社施工として納得できる水準までもっていくのはなかなか大変です。このため、作業員向けの現場教育では、現場の一部、あるいは現場の外に「モックアップ」と呼ばれる施工物と同じものを手本として作り、実際に施工してみてわかった施工方法や注意点、間違えやすい点を記録し、作業員に現場で行う作業や手順を丁寧に教え込むなど、さまざま工夫を行っています。資格取得の勉強で得た知識や基礎技術は、現場で教育する際の土台になっています。
当社の現地スタッフは「エンジニア」と呼ばれ、現場を差配する代理人として活躍しています。日本とベトナムの法令や規程の違いなども考慮しながら、施工品質を高めるための教育を進めています。現地での教育のほかにも、長期または短期で現地スタッフを日本に呼んで研修を実施しており、現地技術者の育成に力を入れています。工事を指揮できる現場代理人も着実に育ってきておりますが、日本と比べてそん色ない水準の人材を確保するのはまだまだ難しい状況です。

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――今後、海外で勤務する後進へアドバイスはありますか?

海外ではしばしば、文化の違いや仕事の常識が日本とは異なる場面に遭遇します。電気技術者としても、日本国内の工事だと「この部分は職人さんが知っている」「これはメーカーが知っている」で済むところが、海外では細かいところまで自分で把握していないと、目標通り工事が仕上がらないことも出てきます。 今はインターネット上に情報はあふれていますが、実際に海外に行って、そこで仕事をすることでしか得られないものがたくさんあります。私自身、海外勤務で視野が広がるなど、非常にいい経験だったと感じています。日本国内の仕事だけでは得られない経験ができ、人間的にも成長できるチャンスだと思います。若い人たちには、進んで海外勤務にチャレンジしてもらいたいですね。

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――電気技術者の資格取得を目指す人たちにメッセージを。

特に海外勤務では、同僚や現地スタッフなどの仲間はいますが、国内で仕事をする場合と比べて助けてくれる人は格段に少なくなります。私も仕事で迷うと原点に立ち返って、資格取得の際に必死で勉強した「電気設備に関する技術基準」などをあらためて見直すことがありました。資格取得を通じて培ったもの、学んだことは、必ず自分の知識となり、スキルとなって皆さんの助けになるはずです。ぜひ積極的に資格取得を目指してほしいと思います。