活躍する電気技術者達

電気を通じて、新しい仕事を創出
植物工場運営で電気工事業者が主役に

活躍する電気技術者達
  • 石井 貴朗さん
    カジノン株式会社
    代表取締役
  • <保有資格>
  • 第2種電気工事士(1998年度)

――仕事内容を教えてください。

当社は1975年に自動火災報知設備の施工代理店として創立しました。私は、初代社長の父親から会社を引き継ぎ、2代目社長として会社を経営しています。現在は、電気工事や消防設備、弱電工事、自動制御事業、太陽光発電所運営などのエネルギー事業、リノベーション事業を中心に経営しています。新たな事業として、2018年4月から自ら施工した植物工場の運営を始めます。電気工事士としてはプロジェクト管理や設計・現場管理を担当しています。

――植物工場の概要を教えてください。また、なぜ植物工場を運営しようと思ったのですか?

福井県美浜町に人工光源を利用した植物工場を建設し、フリルレタスの水耕栽培をします。世の中から衣・食・住に関することはなくならないとの考えより、食に注力し、植物工場を運営することにしました。植物工場の運営は、LED照明の当て方や制御方法、光源の色(波長)調整、温湿度、二酸化炭素濃度、気流速度など、高度なコントロールをするため多くの電気の知識が必要です。当社のように電気工事と計装工事のスキルがあれば、電気工事士が主役になれる分野だと思います。なぜなら建設会社が施工主だとしても、植物工場では電気の知識が絶対に必要だからです。工場建設や運営をするなかで利用者の立場にならなければ、良い設計や良い施工は生まれません。自ら植物工場を運営しノウハウを得ることは、今後ビジネスを進めるうえで当社の武器になると考えました。

活躍する電気技術者達

――植物工場の施工・運営で気を付けていることは何ですか?

植物工場は水と電気が必要になるため、腐敗や漏電が起きないよう注意することが大切です。また、水耕栽培をするためには工場内に何段もの棚を設置しますが、場所により生育が一定しないなどの問題があります。その問題を解決するため、棚ごとに風を送風するダクトと、工場全体へ送風するダクトの両方を設置して風を循環させる工夫を思いつきました。これは電気の専門家として思いついた工夫です。

活躍する電気技術者達

――電気工事業で改善したいことがあるとのことですが。

電気工事の仕事は面白いと思いますが、全体的に下請け意識が強いところが残念です。例えば建物を作る場合、建設会社が元受けになり、下請けとして電気工事会社が仕事を委託される場合が多くあります。電気工事会社が元受けにならなければ労働環境は変わりません。自分たちが元受けなら設計や施工など自由にできます。植物工場は、自ら運営し電気知識や運営ノウハウを利用することによって、電気工事会社が主役になることができます。下請けの構造的なことから変えていきたいと思います。電気工事は社会の大きなインフラの一つです。そして、エネルギーという観点でみれば主役に立つことができる仕事です。ここに大きなやりがいがあると思います。
当社での取り組みとして、電気の基礎的知識をつけるため外部の教育機関などに社員を通学させ、電気工事士の資格取得を推進しています。資格取得と同時に施工経験を積ませて、プロフェッショナルな人材を育てていきたいと思います。社員が電気工事士として自立し、会社に依存しなくても高給を得て生きていけるような世の中にすることが夢です。

活躍する電気技術者達

――経営者及び電気工事士として大切にしていることを教えてください。

電気工事の施工にあたっては、国の法律や基準があります。そういった国の基準が基本となりルールを順守すること、また基本を覚えなければ応用はできないと社員に繰り返し話しています。電気工事士の資格は、顧客にプロフェッショナルとして認知してもらう専門性の高い重要な資格だと思っています。
最近、様々な分野で人工知能(AI)が話題になっていますが、電気工事の現場でもいずれAIを活用することが重要になってくると思います。例えば建物の設計・施工を考えた場合、AIを利用しデータベースを活用したほうが早く立派なものができます。しかし、人間の判断が必要な部分もあります。ここにコンセントをつけたほうが便利だとか、顧客の要望に合わせたアドバイスなど、長年の電気工事士としての経験や知識が必要な部分です。顧客の要望に応えるプラスワンの部分、また信頼関係があって仕事を任せていただいているので、コミュニケーションをとることなどを大切にしています。

活躍する電気技術者達

――電気工事士を目指す人にアドバイスを。

現場で仕事が出来ることと試験に合格することは違うと思いますが、資格取得に向けて勉強をしたことで電気に関する基礎知識を改めて得ることができました。私の場合、過去の試験問題集を徹底的に勉強し対策を練りました。資格はあくまでもパスポートと同じで目的ではありません。現場で正しい施工をするためのものです。資格取得後、様々な案件に対処し、技術力を高め、あらゆる電気工事に対応できるような信頼される技術者を目指してほしいと思います。