――現在の仕事は？

1993年に三菱電機に入社し、中津川製作所に配属されました。住宅用の換気扇など、中津川製作所で扱う製品の電子回路設計に携わっています。現在は電子回路設計部門のマネージャーを行っています。開発に携わったすべての製品に思い入れはありますが、そうした製品が完成して、世の中に出ていくということはうれしいですね。その中でも苦労したのは換気扇用のＤＣブラシレスモーターの開発で、制御回路をモーターに内蔵し、品質を確保しながらいかにコンパクトにつくるか、実現するのに大変苦労しました。製品開発は一人だけではできないので、チームで結束することが重要ですが、一番大切なのは自分自身のやる気と最後まであきらめない気持ちです。
やる気があれば大抵の事は実現できると思っています。この中津川製作所で扱う製品は海外への展開にも注力していきます。海外ではどのような仕様が求められているのか、どういう商品であれば売れるのか、それを検討し、設計して試作品を作り、評価して改善しながら仕上げていきます。海外各国の認証を取得するための製品評価、対策検討なども行っています。

――どうして第３種電気主任技術者の資格を取得したのですか？

中津川製作所で扱う製品は、ほぼすべてにモーターが組み込まれ、電気回路によって動作しています。電気主任技術者試験の内容には電気理論・電子理論をはじめ、電動機応用などが入っています。資格取得を目指して勉強することで、電子回路やモーターなどの知識を身につけることができ、仕事を進める上でのスキルアップにつながると考えて取得しました。

――第３種電気主任技術者の勉強を通じて得られたものは？

設計業務に生かせる技術的な部分はもちろんのこと、様々な知識も幅広く学習できましたので、製品を開発する上で、視野を広くして考えることができるようになりました。例えば、製品開発において、ある機能を実現するために色々なやり方や方法があると思います。これまでの自分でしたら、過去に先輩がやってきたものを真似しただけのものになってしまうこともありましたが、それが、資格試験を通じ、電気やモーターなどの理論をあらためて学ぶことで、色々な方策が浮かんでくるようになりました。同じことを実現するのにも、いくつかの方策があり、その製品に最適なものを探すことができるようになりました。いかにコンパクトにし、いかにコストを下げるのか、そのための構成はどのようにすればいいのかなど、柔軟に考えられるようになったと思います。実際の製品開発にも、電験で学んだ知識が活用できました。

――第２種電気工事士も取得した理由は？

中津川製作所で扱っている製品は、電気工事士によって施工される製品が多いのです。今、製品として施工性をいかに改善していくかということも求められています。それをやるには、電気工事士はどんな工具を使って、どういう作業をしているのか、その実態を知らないといけないと思ったことがきっかけです。机上で本を読んだだけでは分からないことがありますので、まず自分でやってみようと思い、トライしました。資格取得を通じて思ったこと、良かったことは、実際の現場での作業方法を学べたこと、現場で作業する人の気持ちに少しでも近づき、より作業しやすい製品を考えることができるようになったことです。その経験が製品開発にも反映できるようになりました。また、電気工事の作業方法を後進に指導できるようになったことも大きな成果ですね。
第２種電気工事士を取得したことで、製品の施工性改善につなげることができるようになりました。例えば、電源線を接続する際、この製品はどのような方法が適しているのか、ねじ止め一つとっても、施工しやすくするために端子台をどう配置すればいいのかなど、細かい部分にも配慮した製品を考えられるようになりました。作業しにくい製品は施工不具合が発生しやすくなります。それは作業者のミスで終わらせるのではなく、製品そのもののつくり方に問題があるのでは、と考えるようにしています。安全で良い製品を世に出していくのも私たち電気技術者の使命です。作業を体験しながら、やはり現物、現実に触れるというのが重要だとあらためて思いましたね。

――後進に向けては？

私の仕事は、電気技術者資格がないとできないという業務ではありませんが、資格の勉強を通じ、自分自身の視野が広がったと思います。私の経験を後進に伝えたいため、後輩には資格取得を推薦しています。資格を取ることで、知識を深められ、自信を持つことができ、よりよい製品開発につなげることができると思います。
これから様々な資格取得を目指す皆様のご活躍を心からお祈りしています。

（ 内容は、2015年12月末時点の所属・役職に基づくものです）