活躍する電気技術者達

太陽光発電所の長期安全稼働を目指して
きめ細かな保安業務を実施

活躍する電気技術者達
  • 小川克敏さん
    東洋ビルメンテナンス株式会社
    LS白浜発電所
  • <保有資格>
  • 第2種電気主任技術者(2010年度)
    第3種電気主任技術者(1983年度)
    第2種電気工事士   (1995年度)

―太陽光発電所内での具体的な業務内容は?

日本のエネルギー政策の一環で2012年に始まった電気の固定価格買い取り制度に沿って、売電を目的とする太陽光発電所内の各種電気設備の保守業務を一手に担っています。現在担当しているのは和歌山県内にある、建設中の太陽光発電所で、2017年の夏までに工事が完了する計画です。この発電所は、山間部の敷地に約3万枚の発電パネルが設置されており、最大で7800kWを超える発電容量と3万3000Vの出力を誇ります。建屋の建設工事の段階から電気主任技術者として加わり、工事の立ち会いや設備の巡回巡視などを行ってきました。具体的には発電パネルの据え付け強度や架台の仕様などが発電所の保安規則に則って規定以上になっている事を確認しています。
工事完了後は、発電所の稼働に合わせた保守業務が中心になります。一般的に大規模な太陽光発電所となると、土地面積は広く、発電パネルの数が膨大になりますが保安規程に基づき保守業務を行う事が重要なります。パネルを含め設備全体を日々巡回巡視点検することは膨大な作業量と労力が必要になりますが、日々の点検を行う事が発電所の健全な運転につながります。日常の点検と監視システムを活用し、あらゆる角度から異常の無いことを確認します。異常を発見した場合には原因を突き止めて改善するなど設備の安全管理を徹底しつつ、効率的な保守業務を実施しています。今後は、さらに巡回巡視の精度と効率を高める意味で、地上からの遠隔操作で飛行する無人飛行機「ドローン」に各種センサーを取付けて巡回する方法や、眼鏡型の携帯情報端末「スマートグラス」を活用した方法も視野に入れ、取り組んで行きたいと考えています。

――これまでの経験から気をつけている点は?

従来の建築物総合管理において建物が完成した後に提出される電気の図面が、現状と一致していないことがあります。これは工事の仕様変更がその都度図面に反映されないためで、巡回の際に機器の位置や配線ルートなどが図面と合っているかを入念に調べるよう心がけています。また、電気設備を毎日のように監視・点検していても、劣化状況を見極めるのが難しいケースがあります。そのような場合は、過去に計測した数値データと比較し、異常の有無を判断するようにしています。劣化具合を見極めるにはある程度の知識や経験、ノウハウが必要です。長年の経験をもとに定点観測を続けて異常の早期発見に努めています。

活躍する電気技術者達

――記憶に残る仕事と、その仕事から学んだことは?

これまでオフィスやデータセンターといった大型ビルで、電気主任技術者としての経験を積んできました。中でも1970年頃に建てられたデータセンターの電気設備更新業務が印象に残っています。設備更新と言ってもビル内にある稼働中のコンピューターを止めるわけに行かず、全館停電が出来ない状況でした。そこで部分停電をその都度行いながら設備を更新していかなければなりませんが、限られた時間の中で迅速かつ質の高い作業が求められました。そうした業務経験の中で意識したのは入念な準備と作業手順の確認です。部分停電させるための遮断器類を配置し、部分停電させた後、古い設備のフィーダー(幹線)を新しいフィーダーに交換していく作業工程のシミュレーションを何度も繰り返して本番に入りました。中でも継電器を含む部分の更新は信号線の取り扱いが非常に難しいため、メーカーと技術者を集めて何度も打ち合わせを行いました。また停電させてはならない通電部分は感電防止のために保護板やテープで保護し、停電範囲を明確にすることで技術者の注意を喚起して安全対策を徹底しました。技術者全員が同じ目線に立って手順や危険箇所を確認し合い、事故もなく作業を終了する事が出来ました。この時に作業全体を指揮する統括者として、さらに電気主任技術者としての心構えが得られたように思います。

活躍する電気技術者達

――若手の育成で取り組んでいることは?

図面の読み方から機器の操作、点検の仕方などは短期間で教育できますが、停電作業や定期作業の立ち会いはかなりの時間をかけて行います。例えば、停電作業については手順書を全員で読み合わせし、1ヵ月程度の時間をかけて現場確認とシミュレーションを行うほか、各個人の理解度と習得度に合わせた指導を心がけています。また、電気はすべてが物理現象のため、発生している状態を即座に理解することは非常に難しいと考えています。電気現象の理解を深めるためには、各電気設備を等価回路に置き換え、設備の電気回路をマスターすることが重要と教えています。

活躍する電気技術者達

――今後どのようなことを目標にしていますか?

太陽光発電所おいては、屋外で20年以上安全に稼働させることが求められています。
現在は発電パネルや部品の長期使用に伴う経年劣化に対する対応強化、地震や台風など自然災害に対する対処能力の向上、さらには特定の技術者に依存しない安定的な管理手法の確立と体制構築などを目標に取り組んでいます。また、個人的には第一種電気主任技術者の資格取得に向けて勉強中です。そのほか、試験対策に費やした知識の習得だけでは日々の仕事に十分対応できるわけではありませんので、自然エネルギーやシェールガスといった最近注目されているエネルギーの最新情報や、さらには仕事に直結する関連法令の情報などを電気の専門雑誌やインターネットを通して収集し、電気主任技術者として取り扱う業務の幅を拡げ、世の中の要求に意欲的に対応して参りたいと考えています。