活躍する電気技術者達

超高圧地中送電網を守り
電力供給を支える

活躍する電気技術者達
  • 中嶋 健さん
    株式会社シーテック
    電力本部 地中線部
    保守グループ 保守第二チーム
  • <保有資格>
  • 第3種電気主任技術者(2000年度)
    第1種電気工事士   (2005年度)
    第2種電気工事士   (1999年度)

――現在どのようなお仕事に取り組んでいますか?

都市景観の向上や自然災害への対応強化から地中線に注目が集まっており、中部電力管内の地中線設備のほか、火力発電所(愛知県知多市)の地中電力ケーブルおよびケーブルを冷却する設備の保守点検業務に携わっています。
地中線の保守点検業務の中には、マンホール内における電力ケーブルの点検とマンホールとマンホールの間を繋ぐ直径100mmから200mm、長さ100mから200m程度の「地中線管路」と呼ばれる細長いコンクリート等(EIP、PFP)の配管があり、その管路内に試験用の治工具を通して点検する業務を行います。また管路内にカメラを入れて、モニター画面で劣化具合や異常の有無を一つ一つ確かめる作業もあり、その都度、改修や更新の判断を下していきます。住宅街やオフィス街での作業もあり、現場責任者として工程管理はもちろんのことですが、工事の安全と品質の確保に努めています。場合によっては現場周辺の居住者に対して工事内容の説明を行うこともあります。また「洞道(とうどう)」と呼ばれる人が歩ける程度の専用地下道に入って、そこに布設されている電力ケーブルの外傷、劣化による膨らみ、熱による変形などについて入念にチェックしていきます。また火力発電所構内では、電力ケーブルの冷却設備のほか、それに付随する機器や制御盤などの保守点検も含まれています。冷却設備とはいえ冷凍機、熱交換器、制御盤などで構成されるほか、それを作動させるための受電設備もあります。常に正常な状態を把握し、少しの変化も見逃さないようにし、電力の安定供給に努めています。

―――地中作業ではどんなことに気をつけていますか?

地中という特殊な環境で仕事を行っているので、安全確保には細心の注意を払っています。例えば、マンホール内に入る際には、技術者の墜落や物の落下の危険性がありますので、協力会社の技術者も含めて安全帯ベルトの装着を周知徹底しています。また、マンホール内が酸素不足の状態だったり、可燃性有毒ガスの滞留などの恐れもありますので、ガス検知器や換気扇を使用して作業環境の安全を確保しています。

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――これまで関わった仕事で最も印象的だったことは?

火力発電所内には、直径約30cmの大きなパイプ型OFケーブルが布設されていて、その中に275kVの電力ケーブルが束ねた格好で入線されています。そして、その電力ケーブルには絶縁と冷却を目的とする絶縁用の油が循環しているのですが、過去に冷却設備の機器を止めて点検した後、再起動せずに機器が止まったことがありました。手順書を読みながら設備のシーケンスや各機器の状態を一つ一つ確認する中で、最終的には機器メーカーの協力も得ながら再起動したわけですが、技術者と機器メーカーの担当者がコミュニケーションを図りながら、復旧作業を進めたことが強く印象に残っています。

活躍する電気技術者達

――資格取得のメリットと、取得を目指す方へのアドバイスを。

大学時代は電気工学科に在籍していたのですが、研究に特化した専門的な内容ばかりだったので、学んだことを実際の仕事に活かすことはできませんでした。むしろ電気主任技術者の資格取得で電気の基礎知識を身につけたと言えるかもしれません。資格の取得に向けて勉強する中で、制御盤の回路図を読み解いたり、機器の故障など異常時に原因を突き止めるヒントなどを学びました。それが後々役立ったように思われます。取引する電機設備メーカーの担当者の中にも有資格者がいるので、電気に関わる人間にとって資格の勉強をすることは、電気の共通語を理解するようなものです。また資格取得は現在の仕事に必要でなくても、これからの自分のスキルアップにつながります。

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――今後のご自身の目標と、若手の育成で心がけていることは?

以前、鉄塔に付随している「終端箱」の点検が実施されたことがありました。そこで現場アースを取り付けなければならないのですが、従来からの標準的なやり方では取り付けが難しいことがわかりました。そして悩んでいる時に上司でもある先輩に相談を持ちかけたところ、塔体から懸垂がいしのアークホーンに取り付ける標準的な方法ではなく、アーム部に移動して長幹がいしのアークホーンに取り付けるという方法を教わりました。写真と図面を見ただけで即座に判断し、取り付け方法を指導してくれた時は、技術者としての経験やレベルの差を痛感しました。よって経験を積み、上司からどんな仕事でも安心して任せてもらえる様になりたいと考えています。一方、若手の育成では自ら考えて解決策を見いだすことを重視して指導しています。安全を確保する意味から慎重になることは大切なことですが、指示待ちの受動的な姿勢では技術の向上はありません。保守業務では点検後に通電して機器を再起動させるわけですが、その際に異常が発生することがあります。機械的な不具合なのか、電気が流れるフロースイッチの動作不良なのか、さらには制御回路の異常なのか原因はいくつも考えられます。そういった状況に遭遇した時も後輩には対応策をすぐに教えるのではなく解決策を自ら考えさせた上で、作業の漏れや間違いを指摘し、それまで気がつかなかった点をアドバイスするようにしています。