――現在の仕事の内容は？

九州電力福岡電力センターの発変電工事グループで、送電線や変電所など、特別高圧といわれる7000V以上の電圧の高い電力ネットワークの工事を担当しています。

――電気技術者として印象に残った仕事を教えて下さい。

2015年３月に終了した東福岡変電所増強工事(変圧器増設)です。東福岡変電所は、九州最大の都市、福岡市への重要な電力供給拠点のひとつです。変圧器、遮断器、電力ケーブルなどの設備を新設するこの増強工事のうち、メーンとなる変圧器（66kV/22kV）の新設工事を手がけました。機器の容量や構成、仕様の検討から、機器の発注、工事工程の策定、現場での工事まで一連の業務を手がけました。
この増強工事の使用前自主検査の絶縁耐力試験を担当したときは、とても緊張しました。使用前自主検査とは、電気設備を実際に運用する前に、設置者である九州電力が、電気設備がきちんと動くかを確認し、国に報告するための検査です。絶縁耐力試験では新設した機器に初めて電気を通すことになります。
遮断器が投入され変圧器に通電し、「ブーン」という「変圧器が呼吸する音」が聞こえてきたときは、本当にほっとしました。これは励磁音といって、変圧器が正常に動いている証拠となる音です。これまでの工事が無事に完了したのだと、ほっとすると同時に、この機器が数十年先まで福岡市のお客さまに電気を届けるのだと思うと、とても嬉しく思いました。この検査では、報告書の作成も手がけました。

――電気工事士や電気主任技術者になろうと思ったきっかけは？

工業高校の電気科に進みましたから、第２種電気工事士はカリキュラムとして全員受験することになっていました。ただし、第1種電気工事士や第３種電気主任技術者は選択制です。先生から就職に役立つと勧められたこともあって、高校２年生のときに３つとも受験しました。その結果、第１種、２種の電気工事士に合格し、第３種電気主任技術者の試験も１科目合格しました。
第３種電気主任技術者については継続して受験しました。高校３年の年は就職活動で忙しく、残念ながら科目合格には至りませんでした。翌年、九州電力に入社し、鹿児島電力センターで発変電工事グループに配属され、実際の設備を目の当たりにするようになったことで、もっと設備を知りたいと強く思うようになりました。
覚悟を決めて再度、勉強に取り組み始めました。平日は仕事を終えてから３時間程度、休日も勉強に費やしました。その結果、入社１年目で２科目取得。２年目で２科目取得し、第３種電気主任技術者に合格することができました。

――試験のための勉強が仕事に役立ったことはありますか？　電気主任技術者の資格を取って良かったと思うことは？

電力ケーブルの解体調査を担当した際には、非常に役に立ったと実感しました。
この調査は、実際に使っている電力ケーブルを切断して劣化がないかなど、設備の状態を調べるのが目的です。電気技術者の試験、電気主任技術者の試験でもケーブルの設問はあります。この時、主任技術者の受験勉強で学んだ構造の知識が役に立ちました。経験と知識が融合し、視野が広がるのを感じました。
私の現在の主な業務は、変電所における機器の更新、取替えです。そのため、業務上、機器に関する知識が求められる場面は多いのです。例えば変圧器の更新に当たっては、それらを構成する鉄心や巻線、タップ切換器の構造、動作原理を理解する必要がありますし、変圧比や磁気特性、損失の理論など、変圧器特有の現象に関する電気理論の知識も必要です。こうした場面で、電験取得を通して得た知識が役に立っていますね。

――今後の夢は？

今の目標は第２種電気主任技術者です。2015年の１次試験では２科目に合格しましたが2016年の試験で合格できるよう勉強しています。10年後には第１種電気主任技術者になっていたいですね。第１種電気主任技術者は先ほどのような使用前自主検査の責任者となって実施できるようになります。知識を蓄え、経験を積んで、なるべく早く、合格できるようにしたいと思っています。
私たちの使命は、電気設備を通して電気の安定供給を実現することです。トラブルはあってはならないことですが、万が一の不測の事態には、迅速、正確な判断と、柔軟な対応ができる電気技術者を目指しています。

（ 内容は、2015年12月末時点の所属・役職に基づくものです）

九州電力東福岡変電所。中央が、坂本さんが新設工事全般を手がけた66ｋV／22ｋVの変圧器